音をマーケティングの武器に|音の3要素、種類、ソニックブランディングを徹底解説
音をマーケティングに上手に活用できれば聴覚を通して自社ブランドが顧客の記憶に深く刻み込まれるようになります。この記事では音を戦略的にブランドネームに関連づけるソニックブランディングの有効性と音の活用方法について解説します。
公開日:2022.12.15
大型バイクのハーレーダビッドソンはアメリカの象徴的ブランドとして根強い人気があります。日本でも高速道路などで大きなエンジン音を響かせながら疾走する大型バイクを見かけた方も多いでしょう。
2021年に同社は初めて環境に優しい電動バイクの発売を開始しました。電動のためエンジン音がないのかと思いきや、このバイクにはハーレー特有のエンジン音が響きます。実は、これは本物のエンジン音ではなく意図的にシステムとして組み込まれたものなのです。
バイク愛好家にとって音のしない電動バイクは価値がなく、バイクメーカーは音が出るシステムをわざわざ搭載しているのです。
ハーレーダビッドソンのエンジン音のように、音がブランド価値の一部となっている事例は他にも多くあります。ポルシェの電気自動車のタイカンからはエンジン音ではなく「ポルシェ・エレクトリック・スポーツサウンド」という未来的な音が出るように仕組まれています。
本記事では、ブランドの重要な構成要素となりうる音について解説いたします。
他の記事にて、顧客の五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を刺激することが商品・サービスの情緒的価値を高めることにつながり、商品・サービスの機能的価値だけでは差別化が難しくなった環境において有効なマーケティング戦略となることを説明してきました。
▼視覚を刺激するカラーブランディングについての記事はこちら
▼嗅覚を刺激する香りマーケティングについての記事はこちら
五感を刺激することで顧客の記憶の中に留まり、そして心理的なつながりを作り出すことが可能です。音についても聴覚を刺激できるため、上手く活用すればマーケティングに大きな効果が期待できることがわかっています。
では、まず、音の要素から説明します。
音の3要素とは
音には、3つの要素があるとされています
それぞれについて説明します。
振幅
振幅とは、音の大きさのことです。ライブハウスのような大音響の場所へ行くと体全体に振動が伝わってきます。空気が動くことによって音は体に伝わっているのです。音の大きさは空気の動きの大きさに比例して大きくなります。単位は音圧「db(デシベル)」が国際単位として使用されています。
周波数
周波数は、音の高低のことを指します。高周波の音楽はリラックスする状態になると発する脳波のα(アルファ)波が出るとされています。単位は「hz(ヘルツ)」です。人が認識できる領域は20から20,000hzだそうです。
倍音
倍音とは、音色のことをいいます。同じ振幅、同じ周波数でも倍音が異なると聞こえ方が変わります。たとえば、ピアノとヴァイオリンのそれぞれで同じ音程を奏でても全く違って聞こえます。
倍音の違いは人の声の違いとしてもあらわれます。同じ声の高さと声量で歌っても人が違うと印象もまったく異なるのは音色の違いからきています。
ちなみに楽器は種類によって音色が違うため、与える感情も異なってきます。下の表はそれぞれの楽器がどのような感情を与えるのかを示しています。
今後マーケティングに音を活用する際に役に立つ知識ですので、ぜひこの3要素は押さえておきましょう。
では、次に音にはどういったものがあるのか、種類とそれぞれの持つ効果について説明します。
音の種類
1つ目は人の声です。声は話す人の個性によって千差万別です。まったく同じ内容のことを話していても人が変われば伝わり方も異なります。
男性的な低い声で話すことで安定感のあるイメージを与えることができますし、女性的な高い声で話すことで爽やかで明るいイメージになります。また、早口で話すと知識が豊富なイメージを与えられる一方、中身を記憶してもらいにくいという弱点もあります。
状況に応じて、どのような声とスピードで伝えればよりメッセージが伝わりやすいのか検討するとよいでしょう。
2つめは、メロディを含む音楽です。CM、店舗内や動画コンテンツでも、そこでかかる音楽、BGMはブランドに大きな影響を及ぼします。
店舗であれば、音楽は有線放送やFMラジオを流しているケースもあると思います。しかし、ブランドへの影響を考えるともう少し音楽の選定には慎重になってもよいかもしれません。ターゲットとする顧客の好みやブランドのコンセプトに沿った選曲をしてみてください。
最後は、意図せずに発生する音です。最初にご紹介したハーレーダビッドソンやポルシェのエンジン音のように機械の音がブランドのシンボルとなっているものがあります。
機械の音だけでなく、自然の中での音(川の水流や花火の音、焚き火の音など)から特定のモノや場所を連想することがあります。自社のブランドに付随する音は何か考えてみましょう。
意外なところに自社ブランド特有の音が見つかるかもしれません。発見した音をブランディングに活用することで、その音が顧客のブランドへの記憶を呼び起こす鍵となることが期待できます。
では次に音とブランドがつながりであるソニックブランディングについて説明します。
ソニックブランディングとは
ソニックブランディングとは、音を戦略的にブランドネームと関連づけたもので顧客の聴覚に直接的に刺激を与えるものです。
サウンド・ロゴは、ソニックブランディングの代表例です。その音を聞くとブランドがすぐに目に浮かぶメロディです。CPUメーカーのインテルのメロディをすぐに思い起こすことができる人は多いと思います。
サウンドロゴはテレビCMなどの区切りで流れることが多いです。これはテレビ離れが進んでCMの中身をしっかりと見てもらえなくなったために、音を通じて長期記憶として企業やブランド名が残ることの方に期待しているからだと考えられています。動画コンテンツでの広告にも短い時間で記憶してもらえるサウンドロゴは有効です。
製品のスペックのことは知らなくてもメロディの認知度とともに、インテルのプロセッサーは優れているという印象を与えることに成功しています。
ソニックブランディングには、他にマクドナルドの「I`m loving it」やファミリーマートの「あなたと、コンビニ、ファミリーマート」など、メロディとスローガンが一緒になって消費者の記憶に刻み込まれているものもあります。
商標として認められている音
特許庁は、2015年から「音楽的要素のみからなる音商標」について登録を認めています。
大幸薬品株式会社は自社ブランドの胃腸薬「正露丸」のCMに長く使われているラッパの音楽を第一号で出願し、2017年には商標登録が認められています。
他にも、前述のファミリーマートやマクドナルド、味の素株式会社の「おーいお茶」やライオン株式会社のハンドソープの「キレイ、キレイ」などの音も商標として登録されています。
このように音はブランドの重要な一部として活用されています。では、実際にこれからマーケティング活動に音を活用しようと思っている方は何から始めればよいのかについて説明します。
音を活用するために最初にすること
はじめに自社の商品・サービスの音を調べ尽くしてみましょう。店舗販売であれば、お客様が入ってくる際のドアの音、歩く床の音などに気を配ってみてください。一般的にスムースにビュンと開く自動ドアの音は歓迎されているというイメージを受けやすいようです。
調べた上で、マーケティングに積極的に活用すべき音を見つけ出してください。あとは実践し活用していくことが重要です。特にこれまで視覚に偏りがちだったマーケターの方にとっては大きな発見があることでしょう。
BtoBでも自社の入口から受付までの音をマーケティング視点で見つめてみるとよい演出ができるかもしれません。展示会や商品説明会などで共通のサウンド・ロゴを開発するのも有効です。セミナーを開催する機会がある場合は担当者や得意な人に任せるのではなく、どんな声の人が司会するべきか客観的に社内で検討してみましょう。
SNSマーケティングなどで動画を活用している場合は、BGMやナレーションの声がブランドのイメージに合うものか見直してみるのもおすすめです。商品・サービスに付随する音を動画の中に入れ込むことで、より深く顧客の記憶に残すことが期待できます。
まとめ
この記事では、音の分類方法として3つの要素、音の種類とソニックブランディングの有効性、そして音のマーケティングへの実践方法についてご説明しました。
音は人の印象や気分、行動に影響を与えます。「音」を自社のブランディングに活用するためには、まずは自社の周りにある音に気を配りましょう。
そして、自社のブランドに合った音を見つければ、一貫性をもって活用するのが大切です。そうすることで顧客の記憶の中にしっかりと自社ブランドのイメージを植え付けることができるので、ぜひトライしてみてください。
ピクルス / マーケターのバディ
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