
パレートの法則とは?活用方法・メリット・マーケティング事例も紹介
少ないリソースで最大の効果を出すなら「パレートの法則」を活用しましょう。80:20の法則とも呼ばれる本法則は、効果的な施策を立案するのに役立ちます。この記事では、パレートの法則の成り立ちやマーケティングで活躍した事例をご紹介します。
公開日:2022.9.29
マーケティングにはここまでやったら終わり、という線引きはありません。仕事は次から次へと生まれます。
そんなとき「どこから手を付けるか」を考えます。
もちろん、詳しく調べて、もっとも効率的な方法を探すこともできます。しかし、調べる時間がもったいないときや、とにかく早く着手したいこともあるはずです。
そんなときに便利な考え方が「パレートの法則」です。最小の労力で、最大の成果を出すためにとても役立ちます。
そこでこの記事では、パレートの法則の使い方や、マーケティングへの活用方法についてご紹介します。
パレートの法則とは
「売り上げの80%は、20%の商品が作っている」といった傾向を意味します。売り上げだけに当てはまる法則ではありません。「故障の8割は、全部品のうち2割の部品に原因がある」といった形で使われることもあります。
抽象的に言えば「とある全体の数値や成果のうち、ほとんどは一部が生み出している」というものです。
イタリアの経済学者ビルフレッド・パレート氏が19世紀に提唱しました。その名をとってパレートの法則と呼ばれています。他には「80:20の法則」や「ばらつきの法則」と呼ぶこともあります。
当時、パレート氏は「国家の富の80%を、20%の富裕層が保有している」という事実に気がつきました。また、この傾向は時代や国を問わずに共通していることも。
そのため、パレートの法則は経済学をベースに作られた法則です。下図のような冪乗則(べきじょうそく)という統計モデルです。

画期的に思えるパレートの法則ですが、当時は注目されませんでした。
パレートの法則を扱った書籍※ では「残念なことに、パレートは自分の発見の重要性と適用範囲の広さに気づいていながら、それをうまく説明できなかった」とのことです。
※リチャード・ コッチ (2018年). [増補リニューアル版]人生を変える80対20の法則 CCCメディアハウス
パレートの法則が注目を集めたのは、時が経ち、第二次世界大戦の後でした。他の研究者が別テーマの研究をしているとき、80:20の法則を見つけました。経済学ではない分野でも、パレートの法則を再発見したのです。
その後、自然現象や社会活動のさまざまな場面で当てはまることが分かりました。
同書を引用すると、こんなところにもパレートの法則が成り立ちます。

ビジネスの場でも当てはまることがあり「売り上げの80%を、全商品のうち20%が作っている」といった形で使われます。
注意点として、もとは「統計学」のお話でしたが、現代では「経験則」として用いられていることが多々あります。正確にデータをとれば、80:20ぴったりではないですが「成果は均等に生み出されるわけではない」という考え方としてメジャーになりました。
経験則とはいえ、当てはまる場面が多く、使い勝手の良さからマーケティングにも用いられます。
ビジネス・マーケティングにも活用されるパレートの法則
ここからは、パレートの法則がビジネスやマーケティングの場で活躍した事例をご紹介します。
カゴメの事例

一昔前に注目された、トマトブームを覚えていますでしょうか。
2012年、京都大学とキッコーマン傘下の日本デルモンテが「トマトには脂肪の燃焼を促進する成分が含まれている」という研究結果を発表しました。
これにより空前のトマトブームが巻き起こります。多くの方がトマトジュースを飲んでいましたね。カゴメの2013年3月期決算では、当期純利益が前期から54%増と、過去最高益を記録するほどです。
しかし、トマトブームも徐々に落ち着き、前年割れを続けます。
そこで顧客の購入動向を調べてみると「30〜40%の売り上げを占めている、上位2.5%の顧客が離れている」ことがわかりました。
そこで、コアな顧客の離脱防止を目的に「&KAGOME(アンドカゴメ)」という会員制コミュニティサイトを開設します。WEBサイト上にトークルームを設置したり、オフラインの座談会や工場見学会なども実施しました。
2015年に開設し、2021年9月時点で会員数は4.9万人と拡大しつつも、カゴメは会員数よりファンとのコミュニケーションを重視しています。2020年時点での月間のアクション率は10~15%とのことで、ファンとのコミュニケーションが盛んに行われ、離脱防止に成功していることが分かります。
IBMの事例

世界最大手規模のIT企業「IBM」も、パレートの法則を活用した成功事例があります。
IBMというと「名前は聞いたことがあるけれど、普段の生活には馴染みがない」と思う方も多いかと思います。
有名な商品だと、ハードディスクドライブ、フロッピーディスク、プログラミング言語「SQL」、現金自動預け払い機(ATM)を開発したのはIBMです。ダウ平均株価の30社に含まれ、IBMの研究機関からは5人のノーベル賞が輩出されています。
そんなIBMはコンピュータの処理を効率化するために、パレートの法則を活用しました。
IBMは「コンピュータを使う時間の80%を、全機能のうち20%が占めている」ことに気がつきました。よく使われる20%の機能を使いやすくして、高速な処理を実現したのです。
このように、パレートの法則はビジネスやマーケティングの世界で広く活用されてきました。
ところが近年、パレートの法則を覆す現象が起こるようになりました。
パレートの法則を覆す「ロングテール」
マーケティングの戦略として馴染み深い「ロングテール戦略」は、パレートの法則を覆した理論です。
パレートの法則は、全体のうち20%が、売り上げの80%を作る、という法則です。
下のグラフで言えば、ピンク色の部分ですね。

残りの青い部分は、全体の20%の売り上げしか出さない……というのがパレートの法則なのですが、ロングテール戦略はこれを否定します。
このメカニズムを、Amazonの事例とともに確認してみましょう。
Amazonの事例

「ないものはない」くらいに、何でも売っているAmazon。
ニッチな商品が数え切れないくらいあります。
そのため、ロングテールが大変な長さになります。
すると、売り上げ上位20%の商品よりも、下位80%ロングテールによる売り上げのほうが大きくなるのです。

これは実店舗では実現しにくい方法です。土地という制約があるため、商品を無限に増やせないからです。
商品を増やすには、在庫を保管しておく倉庫も作らなければなりません。商品を増やすほど倉庫は巨大になります。
これをお店の近くに作る必要がありますが、大抵はアクセスが良好な土地にお店を建てるので地価が高く、そこに巨大な倉庫を建てるのは無理があります。
ところが、AmazonなどのECサイトはWEBページをほぼ無限に増やせます。ニッチな商品も、いくらでも販売できます。もちろん倉庫は巨大になりますが、お店の場所を気にせず地価の安い土地に建てられます。宅配便で送るためです。
こうして大量の在庫を持つビジネスを実現し、ロングテールを伸ばしに伸ばし、大きな売り上げを作っています。
こうした戦略はAmazonだけでなく、Netflixなどにも見られます。
そもそもNetflixは動画という在庫がないものを扱うため(サーバーは必要ですが)、倉庫すら必要ありません。
ニッチな番組を多数取り揃えてロングテールを伸ばし、他にはない品揃えで集客しています。
万能ではないからこそ、役に立つ
パレートの法則は、すべてに当てはまるものではありません。
細かに調査したデータをもとに80:20になった場合は「統計」の話ですが、たいていは「経験則」であり、実際に調べてみると80:20ではないこともあります。
Amazonのようにロングテール側が大きな売り上げを作り、パレートの法則を覆すこともあります。
それでも、パレートの法則は多くの場面で活用されています。
それは「100の要素があれば、100が均等に作用していると考えがちで、実際は不均等である」ことが、多くの場面で起こり得るためです。
それが90:10でも、70:30でも、さして問題ではありません。
「不均等だ」と疑うことが重要です。
また、鋭く数字を捉える事にも役立ちます。
例えば、パレートの法則を知っていれば、下のようなグラフを見て「上位と下位」でわけて考えられます。パレートの法則を知らなければ「グラフが下がっている」としか見えないかもしれません。

仕事の進め方を考えるときにも役立ちます。

などの方法です。
「クリティカルな要素に重点をおいて対応して、効率よく成果を出す」、「物事を複雑にせず、シンプルに考える」、そんな考え方として、パレートの法則は愛されています。
まとめ:パレートの法則をマーケティングと仕事に
パレートの法則の意味や活用事例をご紹介しました。
マーケティングは、予測してテストして、上手くいったら続けて、予想とは違ったら修正することをくり返す仕事です。正攻法はありますが、必勝法はありません。
ある程度「あたり」をつけることが多い職業です。「あたり」をつけるとき、パレートの法則が便利です。PDCAがもっと手軽に、コンパクトになるでしょう。
マーケティングだけでなく、普段の仕事にも活用できます。
クリティカルな部分を重点的に進めれば、少ない時間で大きな成果をあげられます。
会社の残業も減るかもしれませんね。
あくまで「経験則」ですが、人の経験・歴史に学ぶ正攻法とも言えます。巨人の肩に乗るとも。信頼できる場面は多いので、上手く活用したいですね。
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