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ブログ「明日のマーケティングは、今日の発見から。」

5分でわかるNFTの概要と商売のミライ「どうしてツイートが3億円で落札されたのか」

5分でわかるNFTの概要と商売のミライ「どうしてツイートが3億円で落札されたのか」

NFTとは「Non-Fungible Token」の略語で、データに希少価値をつける技術です。NFTによりデータは資産として取引され、マーケティングにも新しい風が吹き始めています。そこでこの記事ではNFTの仕組みや活用方法を解説します。

モナリザの原画は数億円しますが、レプリカはそこまで高くありません。本物と複製品では希少価値が違うため、価格に違いが生まれます。

これはモノとして現実世界に存在している「アナログ」の話です。ところが「デジタル」の世界では、たとえ本物のデータでも価値は付きませんでした。デジタルデータは複製が簡単で、原本とまったく同じものを量産できるため、本物でも希少性がつきません。

しかし近年、「ブロックチェーン」という技術を活用して、データに希少性を付与する技術が登場しました。それが「NFT」です。

簡単に言えば「このデータは世界に1つしかありません」という鑑定書を付けることができます。これによりデータに希少価値が付き「資産」として取引できるようになりました。

2021年には、Twitterで最初に投稿されたツイートのNFTが291万5,835ドル(約3億円)で落札されて話題になりました。音楽業界やゲーム業界では、すでにNFTを使ったビジネスが始まっており、今後さまざまな業界に浸透していくことが期待されています。

そこでこの記事では、ビジネスに大きな衝撃を与える(かもしれない)NFTについて解説します。

「ブロックチェーン」という言葉に馴染みがない方にも、できるだけ分かりやすく、例え話をしながらご紹介しますね。

なお、マーケティングに取り込むには少し若すぎる技術です。「明日からマーケティングに使える!」という話ではなく、昼休みの話のネタにする程度にお楽しみください。

NFTとは?

NFTとは

Non Fungible Token(ノン ファンジャブル トークン)の略で、NFTと呼ばれています。直訳すると「代替不可能なトークン」という意味です。トークンとは「0xc0ffA492245HDIa39AHIQXFK564912」のようなアルファベットと数字がズラッと並んだ文字列です。

さらに踏み込んで書くと、NFTとは「偽造できない鑑定書と、所有証明書を示すデジタルデータ」を指します。「このデータは原本で、今は●●が所有している」という証明がつき、これのおかげでデータに希少価値が生まれるようになったわけです。

複製対策とNFTの違い

NFTはデータの複製を防止する技術ではありません。

データは複製されますが、誰が本物を持っているかが明確になることがNFTの特徴です。NFTと複製対策は別物とお考えください。

複製対策で分かりやすいところでは画像に「透かし」を入れるなどがあり、ウォータマークとも呼ばれます。

「透かし」がない画像でも、特殊な加工をすることで「透かし」が浮かび上がるように仕込まれているステガノグラフィと呼ばれるものもあります。

画像引用:https://ist.ksc.kwansei.ac.jp/~nishi/lab/watermark.html

他には、パソコンのソフトも「シリアルナンバー」という複製対策が取られています。ネット上に海賊版が流出したときは、ソフトのデータ内に仕込まれたシリアルナンバーを見れば、誰が流出させたか分かるわけですね。

しかし、これらの技術では複製を止めること自体はできません。ウォータマークは写真加工で消せますし、シリアルナンバーは改ざんできます。

つまり複製対策をどんなに施しても複製されてしまうのでどれが本物か分からなくなり、本物の価値もなくなります。

NFTもデータの複製は止められませんが「このデータの本物は●●が所有している」という証明書をつけられます。この証明書は改ざんできません。

NFTも複製を防げないのにデータに価値が付くのは何故?

先述のとおり、NFTはデジタルデータの複製を防ぐものではありません。

例えば、あなたがとあるNFTコンテンツを購入しても、ネット上にある複製品と同じものを入手することになります。

しかし、あなたが購入したNFTコンテンツには、トークンと呼ばれるIDのようなものが付与されており、そのトークンの所有者情報を見るとあなただと分かります。

つまり、NFTとは複製を防ぐものではなく、本物の所有者がただ1人であると証明する技術です。

「それで意味あるの?」と思うかもしれません。複製品があるのにお金をかけてNFTコンテンツを買う理由はいくつかあります。

「本物が世界に1つしかない希少性」に価値を感じる
「本物を正規に所有している事実」に価値を感じる
「本物の音楽データを所有している人は、コンサートで特等席が確約される」といったNFTを持っている人だけに特典が用意され、そこに価値を感じる
「このNFTコンテンツは将来もっと価値が高くなるだろう」と、投資的な視点で価値を感じる
みんなが「価値がある」と言っているから価値を感じる

さまざまな理由がありますが、根幹にあるのは「このデータは本物で、希少である」という価値観です。

NFTを活用するメリット

NFTはデータの所有者がわかることが大きなメリットですが、それ以外にもスゴいところがあります。2つご紹介しましょう。

NFTを活用するメリット

1. 2次流通したとき、作り手にマージンが入る

NFTには条件を満たせば自動で作動するプログラムを仕込めます。

これを活用すると「このデジタルアートが売買されるたび、売上の10%が作者の利益になる」といったプログラムも作成できます。

これまで、あらゆる物品は2次流通があっても作者に利益は還元されませんでしたが、NFTならそれが可能になります。印税生活も夢ではないかもしれませんね。

2. どのプラットフォームでも取引できる

NFTは規格が(ある程度)統一されています。いささか強引に言い換えると、証明書の規格が(ある程度)決まっているのです。

そのため、規格が同じプラットフォームなら横断してNFTコンテンツを利用できます。例えば、Aというゲームで購入したアイテムを、Bというゲームで使用することも可能になります。

NFTの活躍が期待される業界

NFTは、さまざまな業界で活用が期待されています。

画像や音楽などのアート業界では、NFTはすでに活躍中です。画像データや音楽データにNFTが紐付けられ、1つ数千万円で取引される事例も珍しくはありません。

前述の通り、NFTは複製の防止はできませんから「世の中に複製品はたくさんあるけれど、本物は自分が持っているものだけだ」という価値で取引されています。

チケットの売買にも活用が期待されています。NFTには所有者情報が記録されるため、転売防止につながるのです。

こちらもすでに動き始めており、ジャニーズ事務所は2022年5月から開催されるイベントにて、NFTを活用したチケット販売の実証実験を行う予定です。

ゲームにもNFTが導入されています。

オンラインゲーム上の「アイテム」や「土地」をNFTで売買するようなゲームも出てきているのです。ゲームとはいえ仮想通貨を使って取引するため、実際にお金が動きます。数千万円稼ぐ人もいるそうですよ。

こういった活用事例を見ると、NFTが次々に新しいビジネスを作りそうな予感がします。デジタルデータに価値がつくことで、今は想像もできないような変化が起きるかもしれません。

しかし、NFTにはまだまだ課題も残されています。次章で詳しく見ていきましょう。

NFTの問題点

最新技術のNFTですが、まだ未熟なところも多々あります。
代表的なものを3つご紹介します。

1. 法律の整備が追いついていない

法律の整備が追いついていない

日本の民法上では、データなどの無形物には所有権という考えがありません。たとえNFTの所有者であったとしても、法律上では所有者とは言い切れません。

NFTを盗まれたとき、法律上では「返して」と請求できるか明確になっていません。今後の法整備で、NFTがどのような扱いになるか予想できないことも懸念点です。

また、NFTは「所有者を証明するもの」と説明しましたが、もっと正しく言えば「NFTコンテンツに付与されているトークンの所有権を証明するもの」です。トークンが付与されたデータの所有権を示すものではありません。

例えば、私の友人Aさんが作った音楽に、私が勝手にNFTのトークンを付与したら? トークンの所有者は私ですが、音楽の所有者はAさんのままです。

海外のNFTマーケットプレイスをみると、明らかに他人のコンテンツに勝手にNFTをつけて販売している事例も多く、無法地帯です。

NFT(Non Fungible Token)とは代替不可能なトークンであり、あくまでトークンの所有者を証明するのです。

2. 環境問題

環境問題

NFTは環境への負荷が高いと言われています。これは、NFTの基幹システムである「ブロックチェーン」がとても電力を食うためです。

「ブロックチェーン」は情報を記録するデータベース技術です。データベースといえば大きなサーバーに格納されているイメージがありますが、ブロックチェーンにはサーバーがありません。非常におおまかに言うと、世界中にいる有志のパソコンに分散してデータが保存されています。

不届き者が誰かのパソコンに侵入してデータを改ざんしても、他のパソコンに保存されているデータと食い違います。そのため、理論上は改ざんできません。

「ブロックチェーン」によって改ざんできないデータベースができ、NFTはこれを活用して、改ざんできない証明書を作っているわけですね。

ちなみに、ブロックチェーンのデータ保存は誰でも簡単に参加できます。フリーソフトをインストールして、ちょっと面倒な設定をして、スタートボタンを押すだけです。参加すると仮想通貨で報酬がもらえるので、世界中の人が参加しています。

ここで問題になるのが、パソコンの消費電力です。

ブロックチェーンのデータ保存に参加している間、パソコンはとても電気を使います。私が参加したときもパソコンはうるさいほどにフル回転、部屋の温度は2〜3度上昇、電気代も倍くらいになりました。

これを世界中のものすごい数のパソコンがやっているため、それはもう大量の電気を消費します。電気はほとんどが火力発電ですから、何かを燃やします。すなわち、二酸化炭素の排出量が増えるのでは……と言われているわけです。

なかには、以下のようなデータもあります。

Digiconomistのレポートでは、ビットコインの一取引は、米国一般家庭の電力消費の約39日分に相当し、二酸化炭素排出量はビザカード取引1,208,218回分、YouTube動画の90,857閲覧時間分に相当するとされている。
出典:https://newsphere.jp/sustainability/20210519-2/

NFTに参入するということは、ブロックチェーンが環境に及ぼす影響について、何らかのスタンスを取ることになります。「環境に悪いとは知らなかった」では済まされません。

3. 消費者に浸透していない

消費者に浸透していない

そもそも、多くの消費者にとってNFTは未知の技術で、浸透していません。

NFTの概念も複雑です。あくまでトークンの所有者を証明するものだったり、NFTを所有しても複製品は出回ったり、誤解を生みやすいことも懸念点です。

「複製品はあるけれど購入したい」と思う理由には、「●●さんが作ったものだから本物を購入したいし、その証明書が欲しい」という価値観があります。

全く価値のないデジタルデータにNFTを紐付けて販売しても、購入してもらえません。むしろ、価値のないデジタルデータを売ろうとした事実は、ユーザーにとって悪い印象を与えるでしょう。

このような問題点があるとはいえ、便利な技術であることは確かで、少しずつ浸透していくと思われます。

「今すぐマーケティングにNFTを取り入れよう!」というほどの温度感ではありませんが、定期的に最新情報をインプットしておくと良いでしょう。

まとめ:NFTでかわる?商売のミライ

デジタルデータに希少価値がつくNFT。2021年からブームになり、音楽業界やゲーム業界など、さまざまな業界で活用されています。

以前ご紹介した「メタバース」とも相性が良く、仮想空間上で土地を購入するなど、これまでにないビジネスが生まれるかもしれません。

まだまだ問題点は多く残されていますが、便利な技術であることは確かです。商売のミライに思いを馳せつつ、NFTの発展に期待しましょう。

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