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ブログ「明日のマーケティングは、今日の発見から。」

マーケティングリサーチを行うべき理由|10種の調査手法とリサーチの進め方を解説

マーケティングリサーチを行うべき理由|10種の調査手法とリサーチの進め方を解説

マーケティングリサーチは顧客ニーズを発見・抽出するために行われます。リサーチデータを有効活用することで、マーケティング戦略や施策が誤った状態で進む事態を未然に防げます。本記事ではマーケティングリサーチの分類と代表例を紹介します。

マーケティングリサーチとは、その名の通りマーケティングのためのリサーチ(調査・研究)という意味です。

マーケティングリサーチは主に顧客ニーズを探すために行われ、上手く活用すれば顧客の実態から潜在的なニーズまでも見つけ出すことができます。

自社でリサーチを行っていない場合も、他社のリサーチデータを活用するケースはあるため、マーケティングリサーチに関する知識は習得しておいて損はありません。

本記事では、マーケティングリサーチの主な種類から代表例から活用方法についてご紹介していますので、ぜひ今後のマーケティング活動の参考にしてください。

なぜ、マーケティングリサーチは重要なのか_

マーケティングリサーチを行う最大の目的は「顧客が抱える潜在ニーズの発見および抽出」です。あまりイメージが湧かない方もいると思いますので、具体的にマーケティングリサーチの実施例を見てみましょう。

コロナ禍の影響で消費者が自宅で過ごす時間が増えたため、動画配信サービスの利用実態をマーケティングリサーチしてコアターゲットを深堀りし、ユーザー獲得を目的とした戦略立案や商品開発などサービス改善につなげていく業務を行うとします。

その場合、以下のようなアンケートを調査していくこととなります。

▼調査目的 定額動画サービスの需要調査

◆ 設問例
・自宅で過ごす時間はどれくらい増えましたか?
・(増えた場合)その増えた時間をどのように過ごしていますか?
・平日と土日、動画を視聴する時間はどれくらいですか?
・現在、契約している動画配信サービスを教えてください。
・その動画配信サービスを契約した決め手を教えてください。
・どの動画ジャンルを視聴しようと思い、動画配信サービスを契約しましたか?
・現在使用している動画配信サービスに満足している点を教えてください。
・現在使用している動画配信サービスに今後期待していることを教えてください。
・新しい魅力的な動画配信サービスが出来たら、使ってみたいですか?

このアンケート調査(マーケティングリサーチ)を行うことで、

・動画配信サービス自体の需要はどれくらいあるのか?
・どの動画配信サービスが一番契約されているか?
・動画配信サービスの契約の決め手は何か?
・動画配信サービスの利用時間はどれぐらいか?
・今ある動画配信サービスの良い点/悪い点はどこか?
・今後動画配信サービス市場に入り込む予知はあるのか?

といった、ニーズが浮き彫りとなってきます。

もし、このようなマーケティングリサーチを行わなかった場合、以下のような見落としが生じるリスクがあります。

・一番契約されている配信サービスをベンチマークとしていないため、差別化戦略がないまま企画が進み、競合の配信サービスに勝る要素がない状態になってしまう
・配信サービス利用の決め手(例:料金、取り扱いタイトルなど)が裏取りできてないため、セールスポイントが消費者ニーズとズレしまう

このような、顧客ニーズの見落としによるマーケティング戦略の誤りを防ぐためにも、マーケティングリサーチによるニーズの発見・抽出が重要となるのです。

マーケティングリサーチで扱われるデータの分類と調査方法

マーケティングリサーチで扱われるデータには「定量データ/定性データ」の2種類があり、定量データはさらに「数量データ/カテゴリーデータ」と分類されます。また、リサーチ方法は「訊く(asking)/聴く(listening)」の2つに分けることもできます。

後ほど紹介するマーケティングリサーチの具体的な手法も、ここで紹介する「データの分類」を設定・定義した上で集計・活用することになるので、まずは基本から押さえておきましょう。

定量データと定性データ

まずは「定量データと定性データ」での分け方を解説していきます。

定量データ:数字で表すことができるデータ
定性データ:数値化や類型化(カテゴライズ)が難しいデータ

会社の売上やサイトアクセス数は数値で把握できるので「定量データ」ですが、インタビューのコメントや表情は数値化できないので「定性データ」となります。

「同じ物」に対して、定量/定性データ両方が用いられることもあります。
たとえば、「中肉中背の男性」という表現は定性ですが「身長165cm体重65kgの男性」は定量だと言えます。

定量データのメリットは、数字として扱えるので四則計算からExcelなどを活用した分析・解析が行えることです。また、前述のように「身長・体重」のような統一された基準でリサーチデータを数値化できるため、客観性も高くなります。

また、インターネットリサーチを1日で行い1000人単位の回答データを集めるなど、大量のデータを安いコストで集める点もメリットです。
大量のデータを扱うのに向いているため「大数の法則*」が当てはまり、大量のデータを集めれば集まるほどデータの信憑性も高まっていきます。

※大数の法則~調査回数を増やせば増やすほど、期待値や理論値に近づいていく法則のこと。偶然的な結果やごく一部の感想も、大量のデータを集めることで「1000人に聞いた結果、68%でこういう調査結果が出た」と「0or1」ではなくパーセンテージ化することが可能。

一方で、定性データは定量データからだけでは見えない細かい背景や要因を探るのに適したデータです。

たとえば、定量データでは「身長165cm体重65kgの男性」となる一個人の情報が「東京都内在住。山手線で勤務。毎朝通勤前にコンビニで朝食を購入し、新宿の勤務地にて朝食を摂る」まで具体的となれば、身長や体重だけからは見えなかった生活様式や消費形態が見えてくるはずでしょう。

定量データの分類~数量データとカテゴリーデータ

定量データをさらに細かく分類していくと、数字の大小に意味のある「数量データ」と意味のない「カテゴリーデータ」とに分類されます。

身長は数字が大きくなるほど背が高くなることを表しますので数量データとなります。
対して、女性を「1.専業主婦」「2.パート勤務」「3.フルタイム」「4.独身女性」とした場合に、数字の大小は何かの意味があるわけではなく、便宜的に数字を割り当ててるだけなのでカテゴリーデータとなります。

ただし、カテゴリーデータの中でも数字の大小が優劣を意味する場合があります。
たとえば、ある商品の満足度調査で、以下のようなカテゴリーデータが用いられるとしましょう。

1.大変満足している
2.満足している
3.どちらともいえない
4.不満である
5.大変不満である

次にこの満足度調査結果から、上記のアンケート結果の回答(カテゴリーデータ)を「置換スコア」として設定して、平均値を算出する場合の計算式(表)を見てみましょう。

このグラフの「置換スコア」の列では、カテゴリーデータの優劣に合わせて「2~-2」までの数字が「1」の間隔で設定されており、そこから満足度を「置換平均値」として算出していることが見えてきます。

このようにカテゴリーデータの数字の大小を用いて平均値を計算する場合は、数字の大小に意味が含まれることがあるのです。

ただし、カテゴリーデータの数字の大小(1~5)が直接的に計算結果に影響を与えているわけでなく、リサーチ設計上の理由で便宜的に大小に意味のある数字が割り当てられている(グラフの「置換」に変換されている)という点は理解しておく必要があります。

いずれにしても「カテゴリーデータ自体に何らかの意味のある数字が含まれることはない」と覚えておき、例外として「リサーチの設計上の理由でカテゴリーデータの大小に優劣の意味が含まれることもある」と知っておけば、定量データの分類についても理解できるはずです。

「訊く(asking)と聴く(listening)」のリサーチ手法の違い

データ分類の他に、調査集計には「訊く(asking)」と「聴く(listening)」に分けることができます。

「訊く(asking)」はリサーチする側から自ら尋ねることになり、調査員が直接話を聞くインタビューはもちろん、対象者に質問を投げかけるアンケート調査も含みます。対して「聴く(listening)」は、対象者の自発的な発言に対して傾聴するというアプローチになります。

この2つの大きな違いは「調査員が能動的に訊くのか?受動的に聴くのか?」という点になります。

たとえば、前述の「1~5」までの選択式回答でのリサーチは「訊く(asking)」になりますが、グループインタビューなどを通して対象者の会話や表情から真意を見つけ出すといった方法は「聴く(listening)」となります。

マーケティングリサーチの主な調査手法

では次に具体的な調査手法をご紹介していきます。

各手法にはメリット・デメリットがあり、発見したいニーズによっても最適な手法が変わってきますので、まずはそれぞれの調査手法の特徴を押さえていくといいでしょう。

大まかな分類を以下にまとめていますのでご参考ください。

マーケティングリサーチ手法の分類

ではそれぞれの調査手法について解説していきます。

インターネットリサーチ

リサーチ会社の調査パネルに対して、条件に合った対象者にWeb上でアンケートに回答してもらう手法で、短時間で安価に行うことができるのが特徴です。

調査時間の短さ・安さがメリットですが、代理回答が起こりやすかったり、ITリテラシーのない人からの協力が得にくい点がデメリットです。

FAX調査

調査パネルに対してFAXでアンケート調査の発送と回収を行う手法です。

こちらもインターネットリサーチ同様に調査時間の短さや費用の安価さがメリットですが、FAX調査に慣れている層が主な対象となるので偏りに注意が必要です。

電話調査

ランダムに電話をかけ、その場で調査協力を得て質問に回答してもらう手法です。

世論調査などが該当します。インターネット・FAX同様に短期間・低単価に期待できますが、回答者が在宅率の高い属性に偏ったり、アンケート回収率が低い点がデメリットです。

訪問面接調査

あらかじめ設定した調査対象者の自宅や職場へ調査員が訪問し、面接によってアンケート調査を行う方法です。

人対人の聞き取り調査になるため回答精度の高さに期待できますが、調査に時間とコストがかかり、調査員の力量に回答精度が依存してしまう点がデメリットです。また、調査対象者の負担が大きい点にも気を付けましょう。

留置調査

あらかじめ設定した調査対象者の自宅や職場へ調査員が訪問してアンケート票を預け、後日回収する手法です。

上記の訪問面接調査よりも、調査対象者からの協力を得られやすい点がメリットです。こちらも訪問面接調査と同様、調査対象者の負担は大きい点には注意が必要です。

CLT(セントラル・ロケーション・テスト)

回答者を募集して会議室などの会場に集め、アンケートに回答してもらう手法です。

食品の新商品に対するアンケート調査で食べてもらった感想を得ることや、動画CMを視聴してもらって評価を得ることができます。

回答者の絞り込みや選別、事後の調査結果の回収による情報漏洩リスクの管理など実施側でコントロールがしやすい反面、会場設営にノウハウが必要な点には注意です。

HUT(ホームユーステスト)

商品を自宅で使用してもらい、使い勝手や効果をアンケートで回答してもらいます。化粧品やシャンプーなどある程度継続して使用しないと評価できない商品のパフォーマンス(効果)を測定する場合に有効です。

長期間の商品試用に向いている調査方法で生の声を回収しやすい点が魅力ですが、コストがかかりやすく、発売前の情報漏洩リスクの管理も必要になる点がデメリットです。

観察調査

調査員が対象者の購入状況や使用状況を観察することで情報を収集する手法です。対象者の自発的・自然な行動を把握できるため、具体的・詳細的な定性データに期待できます。一方で、調査員にマーケターとしてのセンスがないと何も発見が得られないリスクもある点に注意です。

グループインタビュー

事前に対象者を選定し、専用のグループインタビュールームで特定のテーマについて複数人(5人~8人程度)でディスカッションする調査手法です。

発言者の生の声や表情を観察できたり個々に合わせたインタビューをできる点がメリットです。デメリットは、コストの高さ、調査結果を一般化しにくいことに加え、調査対象者の発言内容がモデレーターの力量に左右されたり、調査レポートの質が分析者の力量に左右されたりするなど、属人性が高い点にも注意です。

ダイレクトインタビュー

事前にリクルーティングした対象者にマンツーマンでインタビューを行う調査手法です

。調査員と対象者のマンツーマンになるため、要因を深く探索することができます。一方で、調査対象者の負担が大きい上にプライバシーの問題も生じるデメリットもあり、広域に渡って行おうとなると人的コストもかかる点に注意です。

マーケティングリサーチは内製すべきか/外注すべきか

ここからは、ご説明してきたデータの分類や調査方法を踏まえた上で「自社でマーケティングリサーチを行うべきか?それとも外注すべきか?」についてご紹介していきます。

内製でリサーチを行う場合、自社内でリサーチを行う方法とオープンデータを活用する2つの方向性が考えられます。

内製化する場合:①自社でリサーチを行う

CLT、訪問面接調査、グループインタビューやダイレクトインタビューであれば、マーケターの権限で行いやすいかもしれません。また、クラウドソーシングを活用して安いコストでインターネットリサーチを行うことも候補に入るでしょう。

ただし、マーケティングリサーチの精度を上げるためには「リサーチ設計」から「仮説設定」なども必要となる点には注意です。

適切な目的設定および設計のない「ただ行うだけのマーケティングリサーチ」では、有用なニーズの発見まで行えない可能性が高いため、自社にリサーチノウハウが溜まっていない場合は、後述する方法を検討するのがよいでしょう。

内製化する場合:②オープンデータを利用する

インターネット上で公開されてるオープンデータを活用するのも手です。
オープンデータとは、二次利用が可能な利用ルールで公開されたデータのことで、商用利用が可能なものもあります。

※二次利用可能/商用利用可能の詳細は、各紹介リンク先の企業の使用範囲にもよります。ご活用の際は、必ず利用規約などを熟読した上でご活用するようにご注意ください。

マーケティングリサーチで活用できるオープンデータには、以下のようなものがあります。

政府統計

総務省統計局は、国勢調査を始めとした、国の統計情報に関する企画・作成・提供を行っています。
その総務省統計局が整備し、独立行政法人統計センターが運用管理を行っている「e-Stat」では、国勢調査、経済センサス、人口推計、労働力調査、家計調査、消費者物価指数などが網羅されています。

政府統計:https://www.e-stat.go.jp/about

国立国会図書館

国内で発行されたすべての出版物が納入されており、インターネット上でも多くの出版物がデジタルデータとして閲覧可能です。リサーチに役立つ資料はもちろんのこと、雑誌のバックナンバーや研究論文の入手もできます。

国立国会図書館:https://www.ndl.go.jp/

民間の研究機関・組織

業界トップの企業は、自社で扱う商品に関する統計情報を公開していることが多いです。
たとえば「ベネッセ総合研究所」では、学生の子供と親の意識調査の結果が公開されています。

ベネッセ総合研究所:https://berd.benesse.jp/research/

その他にも、各業界団体や研究機関は業界全般や加盟会社の詳細なデータブックや調査レポートを公開しているケースもあります。
必要だと感じたら、そういった団体や機関のホームページから資料を探してみるといいでしょう。

一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会:http://www.jmra-net.or.jp/

MDB(マーケティング・データ・バンク)

日本能率協会総合研究所が運営するサイトで、業界調査からマーケティングリサーチまでの幅広い情報をカバーしています。年会費が必要となります。

MDB:https://mdb-biz.jmar.co.jp/

日経テレコン

日経が運営するサイトです。
国内約150万社の企業情報、約550業種の業界レポートに加え、日経4紙のほか主要な新聞媒体の記事が閲覧できます。こちらも有料で月額費がかかります。

日経テレコン:https://telecom.nikkei.co.jp/

ネットリサーチ会社

ネットリサーチ会社も調査データを公開していることがあります。
販促目的での無料公開のものもあれば、有料で公開していることもあります。

たとえば、大手広告代理店である博報堂が運営する「生活定点」では約1,400の項目が無償公開されています。LINE社ではリサーチ専門のサービスがあり、一部情報が無料で閲覧できます。マーケティンリサーチ専門の会社「True Data」では主に消費者の動向に関するデータを扱っており、業界毎にリサーチデータを活用するサービスを提供しています。

生活定点(博報堂生活総研):https://seikatsusoken.jp/teiten/

LINEリサーチ:https://www.linebiz.com/jp/service/line-research/

True Data:https://www.truedata.co.jp/

外注する場合:リサーチ会社に業務委託する

先にご紹介したリサーチ方法の具体例の多くが、

・ノウハウがないと実施が難しい
・調査員のスキルに依存しやすい

などのデメリットがあり、成熟したマーケティング組織でないと企画から実行・分析まで一気通貫して行うのは難しいかもしれません。

そのため、既にリサーチノウハウを持つリサーチ専門会社にマーケティングリサーチを代行するのも手です。

リサーチ会社には、市場リサーチ分野で国内首位企業の「インテージ」、インターネットリサーチに強い「マクロミル」、会場調査などの専門的な調査を代行している「楽天リサーチ」などがあります。

インテージ:https://www.intage.co.jp/

マクロミル:https://www.macromill.com/

楽天リサーチ:https://insight.rakuten.co.jp/

大規模で専門的なマーケティングリサーチが自社にも必要だと感じた場合は、リサーチ専門会社への業務委託も検討しておくといいでしょう。

まとめ:マーケティングリサーチを活用するまでには時間がかかる点に注意

今回ご紹介してきたのは、あくまで「マーケティングリサーチの分類と方法」であり、言わば「マーケティングリサーチを理解するための入口」のようなものです。

マーケティングリサーチをより深く理解して実践していくためには、数学への基礎的な理解、また「数字(定量データ)と施策の効果・ニーズ(定性データ)を関連付けて捉える能力」も必要になってきます。

本記事ではご紹介しきれませんでしたが、マーケティングリサーチの実践には統計数式を用いた高度な計算や分析、新たなニーズを発見して適切な調査方法を設計するための仮説を立てる能力も求められるため、マーケティングの知見だけでなく分析力・仮説思考などが必要となってきます。

ただし、記事後半の方でも紹介した「既に集計されたオープンデータを活用する」という方法は、比較的誰でも実践しやすいリサーチデータ活用法ですので、まずは自身で出来そうな範囲から「マーケティング実務でリサーチデータを活用してみる」ということを意識してみるとよいでしょう。

マーケティングリサーチを完璧に実施することは難しいかもしれませんが、マーケターが日々の業務にマーケティングリサーチの考え方や方法論を取り入れていくことはできます。

ぜひ今回ご紹介したことを参考にしてみて、自社でも取り入れられそうなことは導入してみてください。