インタラ塾 第5回「広告営業力 – 風とバラッド/ワイデン+ケネディ編」
更新日:2022.4.15 公開日:2008.11.26
概要
広告営業力/誠文堂新光社
第5回目の月刊インタラ塾は「広告営業力 – 風とバラッド/ワイデン+ケネディ編」と題して、「風とバラッド」の戸練直木氏と「ワイデン+ケネディトウキョウ」の松永有子氏のお二人がゲストです。大手広告代理店を離れ現在クリエイティブエージェンシーで営業として活動する二人に、激変する広告業界を広告営業の視点から語っていただきます。「大手広告代理店の営業と、クリエイティブエージェンシーの営業の違いとは?」「これからの「営業」に求めらられるのはクリエイティブ能力?」「マス広告出身とウェブ広告出身のクリエイティブはどう違う?」など、大手を離れたからこそわかる「クライアントへの新しい責任の果たし方」ついて、多岐に語っていただく予定です。
イベントレポート
11月はないのか? と思われたインタラ塾。無事、26日第5回が開かれた。風とバラッドの戸練直木さん、ワイデン+ケネディ トウキョウの松永有子さんを迎えたテーマは「広告営業力」。どんな話が聞けるんだろうと期待で足を運んだ会場は、これまでになくスーツ率が高い。
広告営業力 – 風とバラッド/ワイデン+ケネディトウキョウ編
メインゲストは風とバラッドの戸練直木さん、ワイデン+ケネディ トウキョウの松永有子さん。『広告営業力』(誠文堂新光社)に登場しているお二人、広告代理店を経てクリエイティブエージェンシーで営業として活動するという経歴は共通しているものの、打ち合わせはチャットばかりという松永さんに対し、まずは会って話をしてから、という戸練さん。最初の印象は、いっけん真逆だ。
大手広告代理店の営業部長から、auのコンペで「風とロック」の箭内道彦氏と出会い、「風とバラッド」の設立に参加。現在、風とバラッドのアカウントプランナー、風グループのkazepro代表を勤める戸練さん。Nuda(キリンビバレッジ)、アットホーム、フェイタス、マネックスグループなどテレビCM、新聞広告から雑誌(『「旬」がまるごと』)のプロデュースまで出がける。「デジタルコミュニケーションで人が変わる」とのっけから言い放つ松永さん。大手広告代理店入社当時からデジタル、デジタルといっていたら、配属先がシステム部門だったという。そこで、業務システムの開発やアメリカにおける次世代広告システムについての調査を行っていた(2000年当時、もう米国ではこれまでの媒体で広告が売れない、日本もいずれそうなると思ったという)。営業局に異動後、デル、ディノスの新CI告知キャンペーンなどを担当。2006年にワイデン+ケネディ トウキョウに入社。AQUOSの(北米を中心とする)グローバルブランド/サイトの制作担当を経て、現在はグーグルジャパンの広告戦略を担当。
今回は、進行にタナカさんが加わる形のトークセッションだ。Q&Aで、お題にそれぞれが答えていく。まずは、「広告営業の仕事とは?」から。戸練さん曰く、クライアントとの最前列にいて
・まずお金をもうけること
・ビジネスを獲得すること
・得意先の懐への飛び込みかた
・最後に得意先に対しての全責任を負う人
だという。つまり、得意先からの課題を最終的なゴールに持っていく役割だ。得意先の懐に飛び込んで、「人」で勝負する。その人の背景にある会社の看板は、実は関係ないんだという戸練さんの言葉の持つ説得力に感動する。
松永さんも「(広告営業は)得意先のビジネスを成功させるために全部やるひと」と言い、相手のビジネスの成功にいま何がベストなのか、そのために必要な要素をすべて考え、提案し、一緒にゴールまで見据えていくという。松永さん自身、プライドなんて関係ない、そのためには何でもやるそうだ。実際、Googleの「Googleで、できること」キャンペーンのイベント「渋谷で空を飛ぶ」では、どのくらい風船があれば人を浮かすことができるのか、自ら身体を張って実験している。「企画だけして、制作はプロダクション任せはよくない。」
得意先のビジネスを成功させるための提案、これは大事だが非常に難しい。どうしても自分の売り上げだったり、競合に勝つための提案になってしまったり…。ここで、競合はよくないですよと声を揃えて力説する二人(会場の笑いを取りながらも、かなりマジな感じで)。
「総合代理店 vs クリエイティブエージェンシーの違い」
これはずばり、クリエイティブエージェンシーはメディアを部門がないため、メディアでの収益を考慮する必要がない ベストなパートナーと組めること。つまり、メディアコミッション式ではなく、アイデアと高いクリエイティブ力にクライアントからお金を払ってもらうところが違う。特に外資の場合、戦略を考える初期の段階から関わることが多いという。
「これからの(今までも、これからも)営業に求められること」 には、
行動力+交渉力+計算力(戸練さん)
ブランドの頼りあるパートナーになること(松永さん)
メディアが大きく変動しているいま、それにはウェブのメディアも知っておくべき、その上でベストな布陣を敷くことができる。やはり、既存メディアを活躍の場とするクリエイティブ系の人たちが強いという。その中で、ウェブのクリエイティブ系の人たちをどうインボルブして(含めて)いくかが課題ではないか。松永さんからは、ウェブのクリエイティブに対して、(ケースによって)アートディレクション的に足りない部分や戦略など長期的に見てどうなの?というものもあるという言葉も。ただ、その上で、既存メディア+ウェブで、どうチームを作っていくかが必要だと。
「営業として楽しかったこと」は、やはり「競合に勝つ」こと。二人とも競合はイヤといいながら、競合がかなり好きそうだ。 戸練さんからは、もう1つ。「自分がいなかったら成立しなかった仕事をやったとき」という答えが(20年やってきて、ほんの2,3件というが)。そして、営業の立ち位置が曖昧なので、そう言えるようにいかに自分がプロジェクトの中で動くか、なのではないかという。聞いていて、これは、どの職種、職業にも通じるのではないかと思った。その仕事の中でどう自分が仕事を楽しむか。チームを構成するそれぞれが楽しむことで、それが相乗効果となり、よい結果につながることは多い。広告業界にはとんと疎く、アカウントプランナー? アカウントスーパーバイザーって何だ? という感じだったが、身の回りの仕事に通じることは案外、多かった(当たり前なのかもしれないが)
「人は目標を持つとそこにしかいかない、だから目標は持たない」という戸練さんは最後までカッコよく。まだまだこれから、どの国でもやっていけるような、プロの営業として完成したいという松永さんの目標は「コミュニケーションに革命を起こしたい」 熱いトークセッションだった。
ファイブミニッツプレゼン レポート
皮肉屋流自分マーケティング
トミモトリエ(皮肉屋)
実績もスキルもない自分をどう売り出すか。トミモトリエさんの自分マーケティングの方法だ。このトミモトリエさん、ブログ「hiniclip」上での自分生中継で話題になった人だ。現在の肩書き「フリーの皮肉屋」ということで、皮肉屋の定義から。「骨に肉と皮をつけること」「物事を斜めから見る視点」つまりはおもしろいことを考える、作る、実行するということ。重要なのは、企業や世の中的な肩書きではなく、「自分だけの肩書きを持つ」ことだという。
そして、自分ブランディングができたところで、次の段階、プロモーションだ。自分だけの肩書きは持った。しかし、実際のところ、実績もスキルもない。どうやって自分を売り込むか? そこでトミモトリエさんが考えた方法は「自分屋24時」という自分キャンペーンだ。24時間人間レンタルサービス。トミモトリエさん自身のスケジュールを公開して空いている時間を売ります。内容問わず、しかもいい値で。体験したことはブログに公開するので、依頼した側にはいい宣伝になるし、お仕事紹介メディアとしてブログを見に来る人を楽しませることもできる! もちろん、自分にもこんなにメリットはある。
・まわりからのニーズを知る
・体験することで自分の知識になる
・間口を広げることができる
・ある意味、営業&就職活動
・一応収入になる(かもしれない)
・楽しい
1番にはなれないタイプ、基準のあるフィールドで戦うのは無理と、圏外目立つことを目標にするというトミモトリエは、自分ブランディングの次のステージ、自分プロモーションに進む。自分も自分が好きなので、この自分プロモーションにはかなり共感だった。「自分屋24」は12月から本当に(!)サービスインとのこと。ちなみに、想定時給は800円(ほぼ東京都産業別最低賃金)だそうだ。
「コラボレーション視点で企画する」
鈴木拓生(株式会社リクルート リクルートメディアテクノロジーラボ)
リクルートにて、1-click Award、MA4、DESIGN SHOWCASEなど、ユニークなコンテンツを手がける鈴木拓生さん。1-click Award、MA4が「アワード」という形式を取るのに対し、それ以外の方法論で何かできないかと考え、企画したのがDESIGN SHOWCASEだという。
ウェブには個人で作品を作っている人が多い。そういう人たちと一緒に仕事をしたら、どんな商品が作れるのか? リクルートの仕事としてやる以上、メリットがなければならない。もちろん、コラボレーションする相手にも。それで考えたのが、リクルートが公開しているAPIをそのコラボレーションのツールに使うこと。コンテンツにAPIを使うことで、(ユーザーの動線的には)必ず自社に戻ってくる。それによりメンテナンスも可能だし、ブランディングの効果もある。
DESIGN SHOWCASE 1ではHOTPAPPERのAPIを使い、「食」をテーマに。DESIGN SHOWCASE 2では、AB-ROADのAPIIで「旅」をテーマに、複数のクリエイターとのコラボレーションを実現。
ただ、注意したのはお題があまりにも自由すぎるのも1つのコンテンツとしてみたときどうなのか、という点だったという。このとき鈴木さんが参考にしたのは「WEST8」、オランダのランドスケープアーキテクトだ。彼ら20チームからなる建築家によって設計された「ボルネオ・スポールンブルグ」は、オランダの住宅事情を大きく変えたといわれる画期的な開発プロジェクト。高さ、素材、容積率など、一定のあるルールを設けることで、多様性と統一感を共存させている。
個性やクオリティを活かしつつ、統一感を出す。そこには、厳密すぎないルールが必要なのだ。もちろんそのほか、想定外のリアクションが起きる可能性を誘発するような「何か」は入れておく。
今回のこの企画DESIGN SHOWCASE では、想定していたよりもマーケティング系ブログでの反響が大きかった。広告の新しい作り方として取り上げられたことがうれしかったという。
最後に、こういうタイプのコンテンツでは結果を計るのが難しいのではないか、とのタナカさんからの質問に、PVに換算して媒体としての値段を出すという形になるが、こういうことができるのは、まずやってみよう、やりながら考えようと、トライ&エラーを許容してくれるリクルートの会社としての風土が大きいのかもしれないと語る鈴木さんが印象的だった。
「こんなエージェントと仕事がしたい!」
長澤龍(株式会社ハドソン 宣伝本部宣伝部マーケティンググループ)
宣伝担当者としては、「効果的なプロモーションを実施したい!」というハドソン宣伝部の長澤さんは、プロモーションプランを検討する際の気になるポイントを語ってくれた。 まずはとあるアンケートをもとに、広告会社に期待すること。
アンケートの上位には、
・クリエイティブ能力
・広告効果の測定と把握
・広告媒体の確保/出稿管理
などがあげられるが、実はこういう結果になるのは複数回答の場合が多く、これを「もっとも期待する点」に起きかえると、クリエイティブ能力に次いで
・マーケティング面の分析と計画
・基本的な広告計画の立案能力
・媒体計画の立案能力
などが見えてくる。ライフサイクルが細分化しているいま、基本的な広告計画を立案する力、計画性が重視されてきていると長澤さんは分析する。
宣伝担当者としては、「効果的なプロモーションを実施したい!」というハドソン宣伝部の長澤さんは、プロモーションプランを検討する際の気になるポイントを語ってくれた。
社内の稟議を通すには、まず最初のプランニングが重要になるし、プランが通ってはじめてクリエイティブに落とし込むことになる。つまり、発注前の提案力がポイントなのだと。しかし、意外に広告会社の営業さんは提案してくれないという。
クライアントの戦略はどうなっているのか、さらにはいつなら予算が潤沢なのかなど、時期的なタイミングを計ることが重要。ここで、状況を打破するキーワードは「時間」だと、時間における「3つのA」(長澤さん自身が考えたという)を…。
・Ad(広告)
・Acount(顧客)
・Agent(代理店)
この中で、Agent、代理店がいかに時間を作ってくれるか? 年度末、予算消化に入る時期を狙っていまからその時期向けの提案をしてみる。たとえそれがダメでも、それを繰り返していくことで、その会社の感覚(稟議の流れや時期の取り方など)がわかってくるのではないかと。
「まずは、去年どうでしたか?というような世間話でもいいから、そこから始めませんか。10%オフです、キャンペーンですといったセールスをメールでするより、話に来てください。」ここにも広告に熱い人あり、だ。
ゲスト
戸練 直木
風とバラッド株式会社
アカウントプランナー
kazepro
代表取締役
1986年、第一企画株式会社(現・ADK)に入社。大阪支社・営業部に配属される。
93年、東京本社へ異動。日清製油(現・日清オイリオグループ)の担当に。
99年旭通信社と第一企画が合併し、社名はADKヘ。
この頃、DDIを担当し、cdmaOneの市場導入を実施。04年、auのコンペで「風とロック」箭内道彦氏と組み、音楽キャンペーンを獲得。
この出会いをきっかけに、同年ADKを退社。「風とバラッド」の設立に参加した。
現在は風とバラッド・アカウントプランナー兼、風グループのkazepro代表取締役、プロデューサーとして多忙な日々を過ごしている。
松永 有子
Wieden+Kennedy Tokyo
アカウントスーパーバイザー
10歳から高校までを香港で過ごした後、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。
2000年株式会社博報堂に入社。2年間のシステム部門での業務システムの開発経験後、営業部へ転局しデル、ディノス他、国内外ブランドの営業を担当する。
2006年6月に、ワイデン+ケネディトウキョウに転職。
AQUOSのグローバルブランド広告担当を経て現在はGoogle Japanのブランド戦略及び広告制作実務の全体統括をしている。
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