インタラ塾 第4回「福田敏也が語る企画脳の鍛え方」
更新日:2022.4.15 公開日:2008.10.9
概要
第4回目の月刊インタラ塾はゲストにトリプルセブン・インタラクティブ代表取締役、福田敏也氏をお招きし、「企画脳の鍛え方」というお題で語っていただきます。Webが現在のように普及していなかった頃から、マス広告とWebのクリエイティブに携わり数々の実績を残してきた、福田氏の広告クリエイティブの本質についてふれられる貴重な機会です。
イベントレポート
第4回の10/9も行ってきた月刊インタラ塾の勝手にレポートだ。
第4回は、トリプルセブン・インタラクティブの福田敏也さんがメインゲスト! CMプランナーとして、マス広告やWebも含め、多彩に活動する他、多摩美、武蔵美などで講師をつとめる。また、777塾という私塾も開催している。
博報堂入社当時は山のように企画を作り、それでも全ボツ。それでも次のブレストにまた10も20も企画を出す。そんな体育会系な日々だった。この企画がなぜダメで、あの先輩の企画がなぜいいのか? そう自問自答する中、自分なりの方法論を身につけていったという。
企画にもトレーニングが必要だ。誰でもトレーニングをすれば、おもしろい企画、いい企画を出せるようになる。そんなコンセプトのもと、福田さんが普段、私塾「777塾」で教えている「企画脳の鍛え方」を語ってくれた。
どうすれば企画できるようになるのか?
サッカーがうまくなりたい。それにはトレーンニングをする。それなのに、企画の上達には何もしないのか?
そのトレーニングとは
いい企画に埋め込まれた表現のツボを発見する。
そしてそのツボで自分も表現してみる。それを繰り返す。
時には、すべてを自分一人で組み立ててみる機会をつくる
ことだという。
まず、(サッカーでいえば)ワールドカップレベルのクリエイティブを「日常的に」「たくさん」見ること。その習慣をつけること。広告、インタラクティブの賞は数多い。そんなクリエイティブアワードの各賞を見ること。ただ、ああすごいなと見るだけではなく、そして、どうしてこの作品が賞をとったのか、何がおもしろいのか、自分の中で言語化していく作業が重要。たとえば金・銀・銅とあるなら、なぜあの作品が金で、こちらが銀なのか、その理由を考える。自分にとっていいとは思えなくても、そのクリエイティブのツボがどこにあるのかを考える。これは、自分の視点できちんと落とし前をつけていく、自分の中にものさしを作っていく作業だ。
777塾では、たとえばバナー広告を延々と見ていく。まず、バナー広告というところがポイント。バナーという「定型のもの」の中に作られるさまざまなものを見ていくことになるからだ。そうして、なぜこれがいいのか考え、その落としどころを別のクリティティブに使う。そういうトレーニングをしているという。
この「演習」の繰り返しは、
サッカーのワールドカップの試合のDVDを穴があくほど見る
↓
ジダンのプレイのすごさを分解する
↓
その技を試合で自然にできるようになるまで徹底的に練習する
というようなもの。
クリエイティブのツボを分解すると同時に、そのツボを自分のものにするために何度も脳内シミュレーションを繰り返す。それによって、その技を実戦に活かすことができるようになる。
そしてさらに、誰の力を借りることなく、まとめ方、考え方から具体的な表現にいたるまで、すべてを自分で組み立てる訓練をする。それには、実戦として自由参加のクリエイティブアワードになるべく多く参加することだと。もちろん、ただ参加するだけではなく、応募要項を読み、そのアワードが何を審査しようとしているのか? 過去の受賞作を分析し、なぜそれが賞をとったのかを分析する。自分なりの攻め方、表現をできる限りたくさん考える、これはもう脳みそに負荷をかけてありとあらゆることを試してみることだ。そうして、本当にいい企画ができたら実際に応募してみて、もし受賞しなかったら、何が足りなかったかを考える。クリエイティブのツボを分析すること、手を動かして作ってみること、そして、決してやりっぱなしにしないこと。こうしたトレーニングで誰でも、いい企画、おもしろい企画ができるようになるはず。
いろいろなすごい作品を見て、そのクリエイティブのツボを探ってみよう、というより具体的、かつ実戦的な福田さんの特別講義だった。
「駆け足で、本当に役に立ったかわからないけど…」と、最後にちょっと不安そうに語った福田さん。でも、福田さんの、「鍛えればいいんだ。トレーニングすればできるようになるんだ」という教えは目からウロコ。
今できなくても、できるようになるためにトレーニングすることはできる。すぐにでも始められる。それがわかったインタラ塾第4回。実り、大きかった感あり。
ファイブミニッツプレゼン レポート
「エコ・マーケティングの仲間募集!」
山口岳さん(株式会社オプト)
最近エコが流行なのか? 単に、企業がエコをビジネスにしているのか?地球温暖化だ、CO2の排出量削減だと、最近はCMでもエコエコとうるさい。なのに、実際、CO2排出量は増加傾向にあり、一向に減っていない。「エコ替えもいいけど、もっと効果的な方法があるんじゃないか」と言う山口さんが紹介してくれたのは「固定価格買取制度(FIT:Feed In Tariff)」。
FITとは、自然エネルギーで発電された電力を通常価格の3-4倍で将来に渡って電力会社が買い取ることを約束する制度。この制度を導入すると、電力量が毎月300円~500円程度あがるが、自然エネルギーで発電すると儲かるため、ドイツやスペインでは太陽光パネル市場が急成長した。つまりエコが得して、しかもCo2の削減にも大きく貢献する画期的な制度です。
この制度の何がいいかというと、太陽光発電(および風力発電など)はCO2を出さない。つまり、FITで太陽光発電が増えればCO2排出量が削減できるのだ。
山口さんが「FITいいと思った人、太陽光発電したいと思った人いますか?」と聞くと、かなりの手が上がった。「みんなの意志を表すことが大切。意志を表すことで世の中を変えていこう、一緒にエコ・ マーケティングをやりませんか!!!」と呼びかけた。そんな山口さんの座右の銘は、アラン・ケイの「未来を予測する最善の方法はそれを発明することだ」だ。
「メイベリンニューヨークのWEB戦略」
下条泰朗さん(株式会社NIKKO)
ファイブミニッツプレゼン、2回目の登場の下条さん。「ハインツバイラルCM」で会場の空気をツカんでから本編に。今回はメイベリンニューヨークの新作マスカラのキャンペーン戦略を語ってくれた。
メイベリンといえばNo.1マスカラメーカー。そのキャンペーンなので他社がやらないことをやろうと、「プーペガール」という女性向けコミュニティサイトを使ってアバターの瞳を広告に使ったキャンペーンを展開。メイベリンの新作をそのままアバターのアイテムにし、ユーザーが買って、自分のアバターに使えるようにしたのだ。この日がキャンペーン初日、プーペガールのこのアイテムはインタラ塾までの3時間で6000個が売れたという。
下条さんが企画を練るときにいつも考えるのは、
・おもしろいことか
・初めてのことか
だという。
雑談中思いついたというこのアイデア。メイベリンからOKが出た要因は「初めて」だったこと。「アバターのアイテムを広告に使う」ことが初めて、一番最初であることに意味があった。もちろん、初めてのことに対して抵抗を受けることもあって、それを崩すのも自分の仕事だと思うという下条さんの真摯な姿勢が印象的だった。
「Googleチュートリアルビデオの作り方」
タナカミノル(株式会社ピクルス)
予定していたプレゼンターが都合がつかなくなり、ピンチヒッターで急遽タナカさん登場。Googleツールバーのチュートリアルビデオを作成した際のプレゼン方法をプレゼン。
本番のチュートリアルビデオを紹介したあと、自分の場合はプレゼン用にデモのビデオを撮ってしまいますとそのデモを2パターン。スクリプトは事前に用意し、早朝7時集合で撮影したという。タナカさんのカメラの前での成りきり度も高く、デモとはいえ、ビデオの完成度はかなりのもの。
先方も絵コンテくらいは用意してくると思っている、その上をいくことが大事。具体的にビデオを持っていくと相手の反応が違うという。
絵コンテで映像のイメージをつかむのは、はっきりいって難しい。プレゼンされる側からすれば、「こういうもの」とズバリ提示されると(頭の中で登場人物を置き換えることは必要だが)完成イメージがつかみやすく、確かにOKしやすくなる。逆にイメージが違う場合でも、「もっとこうして」とダメだしもしやすい。
プレゼン相手の状況を読み、相手の先をいくタナカミノル式プレゼン。さっそく、明日から使える。
「5分でわかる”投稿もの”の恐ろしさ」
清水幹太(株式会社イメージソース / 株式会社ノングリッド)
第2回目のメインゲストに登場した清水さんのリベンジ。前回1時間の枠のうち、ほぼ8割が「ここに至るまでの自分の話」で終わってしまった伝説の男だ。今回は、プレゼン資料の画面がよどみなく流れる中で語り始めた。
投稿ものコンテンツを手がけることが多いという清水さん。「投稿もののコンテンツはたいへん。」何がたいへんかというと、バックエンドが(たいていCMSだったりするが)、かなりすごいことになっているし、実際サービスが始まれば監視する人が必要。アイドルの写真とか、皇室の写真、NGワードとか、ダメですよと言っても絶対投稿してくる人がいる。そのため監視が必要になるが、そういう人はシステムに詳しいわけではない。いわゆる素人が前提になる。中の人が素人でも簡単に使える監視システムを提供するのもたいへん。さらに、個人情報保護法とかも、もうたいへん! という…。
しかし、たいへんすぎる仕事の向こうには、ユーザーの深い体験があるのだともいう。こうした「深いユーザ体験、user experienceは、人にいい効果を与えることができる。」
ここでマックスマイルファクトリーを紹介。笑顔の写真(スマイルフォト)を送ると、携帯の待受やデコメール、mixi用フォトや壁紙といったオリジナルのオマケがゲットできる、お母さん向けのブランディングコンテンツ。清水さんもお子さんの写真を使って、楽しそうにマックスマイルファクトリーの概要を説明する。こうしてマクドナルド、なんかいいよねとブランドイメージのアップに貢献できれば万々歳だと。
「投稿もの」の恐ろしさと楽しさの両面がなんとなく垣間見えた、清水さんのファイブミニッツプレゼンだった。
ゲスト
福田敏也(フクダトシヤ)
トリプルセブン・インタラクティブ代表取締役/クリエイティブディレクター
武蔵野美術大学非常勤講師/多摩美術大学非常勤講師
1982 年、博報堂入社とともに制作局に配属。CMプランナーとして200本以上のCM制作にたずさわったのち、1995年博報堂電脳体設立とともにネットクリエイティブの世界へ。「お年玉くじつき電子年賀状」「デスクトップ伝言ツール・ペタろう」などのコンテンツ型ネット広告商品を企画開発。1999年からは、クリエイティブディレクターとしてネット広告の前線で活動。2003年独立し、トリプルセブン・インタラクティブをスタート。以降、多種多様な広告主のネットコミュニケーション活動をサポートしている。カンヌを始めとする海外の広告賞は、この8年間で40以上受賞している。多摩美、武蔵美、宣伝会議、広告学校などで講師をつとめるほか、777塾というインタラクティブクリエイティブの私塾を開くなど、後進の育成にも積極的にかかわっている。
タグ:
ピクルス / マーケターのバディ
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