インタラ塾 第7回「中村洋基と木谷友亮のWeb業界一受けたくない授業」
更新日:2022.4.15 公開日:2009.1.28
概要
第7回目の月刊インタラ塾は「WEB業界一受けたくない授業」と題して、「Wrap Mixer」「UNIQLO TRY」「どこでもラストガイ」等を手がけた「電通」の中村洋基氏と「井上雄彦 最後のマンガ展」「NIKE 超短距離1m走選手権」「EPOS CARD 100design cards project」「HONDA avenue H」等を手がけた「カイブツ」の木谷友亮氏のお二人をお招きし、「一方的に受ける」授業ではなく、みなさんで「一緒に考える」授業を行う予定です。
人が他人と一緒に仕事をする理由は、自分一人では超えられない壁、考えつかないものを創造できるからです。そんな化学変化からすごいアイデアが生まれたりします。皆さんも一緒に考えませんか?
イベントレポート
年明け一発目、第7回のメインゲストは電通の中村洋基さんとカイブツの木谷友亮さん。数々の賞を受賞しているお二人からどんな話が聞けるのか?
さっそうと壇上に現れた中村さんと木谷さん。今日のプレゼンについて、
「僕らは現役のプレイヤーだし、ひと様にむかってWeb広告とは何ぞやと話しするのは違うかな。一方的に話すのではなく、みんなで一緒に考えたいと思った」と中村さん。これまでも一方的にWebってこんなにおもしろいよって紹介するような講義はやってきた。そこで、今回はそれまでとは違う方法論を採ることにしたという。
その具体的な方法とは?
プレゼン+チャットだ。指定されたURLに携帯やPCからアクセスすると、コメントを送ることができる。プレゼン中、【?】マークが出てきたら、そのポイントをみんなで考えよう、考えたことをコメント送信して、ということらしい。
まずはアクセスしてみようと、会場は一気に盛り上がる。
コメントは画面を右から左にスクロールしていく。自分が送信したコメントが画面に表示されると「おお!」という感じだ。でも、アクセスが集中してバグが発生し、「undefined」エラーに立ち上げ直すという一幕も。
ということで準備完了。まずは、自己紹介+制作事例の紹介から。
電通で「テクニカルディレクター」の肩書きを持つ中村さん。「テクニカルディレクターって何?」CMプランナーやコピーライター、アートディレクターたちのおもしろいアイデアをどうしたらWebに落とし込めるか、アイデアをWebの技術とうまく融合させておもしろいもの、というカタチにすることだという。
木谷さんとは5年前に偶然、一緒にWebの仕事をしてみたら「何故か、すごくいいものができるな」と。それからよく一緒に組んで仕事をするようになったそう。
その木谷さんは5年前に電通のIC局に出向になるまでは紙の世界の人。
グラフィックデザインをやっていた。WebはYahoo!くらいしか見たことがなかったのが、それをきっかけにWebに携わるように(当初は、「IC局への出向は残念」だったらしい)。2年前に独立して、現在、株式会社カイブツを立ち上げている。今の仕事の割合はWeb50%、紙50%くらいの比率。ちなみに、今では「IC局への出向もよかった」と思っているという。
■どんなものを作ってきたか― バナー編
最初の作品は、1-click Awardのオマケクリックとして「カイブツ+中村洋基」で作ったもの。食べかけのイチゴのショートケーキが復元されていくというクリップ。
おまけで、イチゴが最後には別のモノに…。
「木谷さんの紹介として、彼のすごいPhotoShop技を見せたくて作ったもの。でも、ショートケーキを復元するだけだと面白くなかったので、何か別のものを…と。すごい技術なのに、根本的な思想が間違っているものがいいな、と」(中村さん)
中村さんといえばバナー広告だが、「バナー広告はウザイ」という文化を、払拭したいと思ってやっているという。
公共広告機構(AC)の一連のバナー広告では、公共広告機構のまじめなイメージをぶちこわしたい。ポジティブなアプローチでACを語れないかと作ってみたという。
・小便小僧(水をリサイクルしよう)
・ドライバーズ・アイ(運転中の携帯電話は無視してください)
・過去(エイズ検査を受けよう)
「エイズ検査を受けよう」キャンペーンは、CMでも同じ「元カレ、元カノ」メッセージが流れていて、そこから着想した。
インタラクションを介在させたほうが、面白くなると思い、マウスカーソルの擬人化をACに交渉したという。
・「Wrap it」(クレハ)
クレラップの保存性の高さを表現するのに、クレラップをかけたところだけサイトが保存されるようにすればおもしろいんじゃないかと思ったところから。じゃあ、保持されていない「未来」をどう表現しようかと思い、
「将来、MSNがなくなっているって、どうでしょう?」と大胆な提案をして、Not Found表示になった。
Hondaのカーナビ・INTERNAVIのバナー広告では、「特に、このカーナビの機能に言及していません」と語った。こういった商品の場合、新機能をインフォマーシャル的に宣伝することが多い。どうしても、他の競合の製品と比べてどういう新機能があって、だからこっちがいいんだ…という話。だが、バナー広告の場合「それは、響きにくい」と中村さんはいう。カーナビが欲しいと思う瞬間は人生の中でほんの一瞬でしかない。そのユーザーに機能を伝えるのではなく、誰にでも「なんだこれは!?」「おもしろい」と思えるものにして、その先に進んでもらうきっかけになればいいと。
・Zoom in / out
“広域”から“詳細”まで、バナーのスライダーを動かすと画面表示も連動する。カーナビのいいところは、引いてみたり寄ってみたり、上から見たりできること。それをブラウザの画面につけてみました、という発想。
・Viewpoint
ポータルサイトの「記事を一望できる」という特性はカーナビの「上から視点」に近いんじゃないか、それで、自分の目線で見たらどうなのかと。この目の回る感覚はなんともいえないです。
…そうはいっても、機能を伝えたいときもある。中村さんが採用したのは、地図情報の自動アップデート機能。
・The Ten Commandments
「MIRACLE」ボタンを押すと、新しい道が現れる!
すると、連動して地図画面にも新しい道が…。
なぜ、このような作品を作っているか?
バナー広告は、通常のWebサイトに比べてはるかに見る人の数が多い。それがメディアというものだから。しかし、見る人の大半にとってバナー広告は「ウザい、動く看板」だったりする。結果、バナーの平均クリック率は0.1%ほど、という状態だ。
そこから、中村さんはブレイクスルーしたいという。「これが本当の『バナー』だという、新しいスタンダードが作りたい。つまらないものでなくなれば、ほかのクリエーターやクライアントも、それを目指す。みんなも、クリックするだけでは飛ばない、面白い仕掛けのバナーに好意的になり、それにあわせてサイトのレギュレーションも緩くなる。メディアも、さらに自由度が上がっていく。そういう、いい相乗効果を生みたいと思ってます。」
■どんなものを作ってきたか― サイト編
次に中村さんが関わったサイトについて。
・どこでもラストガイ
PS3の『The Last Guy』は、ゾンビがはびこる街から、人々を救うというゲーム。このプロモーション、「どこでもラストガイ」ではURLを入力すれば、そのサイトがラストガイのステージになる。しくみは、URLを引数にその画像のキャプチャを返してきて、あとはそれをFlashで処理。
それぞれのサイトにはいろいろな形や色がある、その膨大なリソースを他のエンタメに使えないかと思っていて、作ったという。
ブログパーツもあり、ブログパーツをブログに貼ればブログがすぐにラストガイのステージに。「ブロガーは、読者が楽しんでもらえるネタを、つねに探している人だと思う。そこで、“ゲームのステージになる”という、簡単に得になり、そのブログならではのオリジナリティも出るブログパーツは、使いでがあると思った」
ちょうどこの話があったのは、「なんで、広告ってみんなに振り向いてもらえないんだろう」と中村さんがうんざりしていた時期だという。クライアントからのプロモーションの対象がゲーム、いわゆる“エンタメ”だったので、ただそれをおもしろく遊べるだけでいいんじゃないかと、できるだけ簡単なサービスで、誰でもそのゲームの体験版が楽しめるようにしたという。
・UNIQLO TRY
ユニクロのブラトップ(ブラカップ付トップス)という製品のプロモーション。ブラトップという製品自体にまだ抵抗感がある。だけど、つけてもらえばラクさやフィット感をわかってもらえる。じゃあ、その実感を手に入れるには…と考えて、2つの方法を思いついたという。1つは統計。「100人のうち90人が言っています」という説得力のある統計データ。もう1つは、「ブラウンモーニングリポート」のように、実際につけてもらって、その実感をビデオで語ってもらう。これを同時にやることはできないかと。
具体的なしくみは、全部で350人くらいの人にアンケートを採って、再度、アンケートで答えたことをビデオで自分の言葉で答えてもらう。統計グラフを構成しているのが、そのビデオひとつひとつのチップ。
また、絞りこみ検索を高機能にしている。たとえば、自分の身長・年代・サイズ…その属性で絞り込んだ、アンケートの結果を、一発で表示できる。これは、同じ境遇のひとの意見が共感しやすいから。また、アンケートの質問には、「化粧にかける時間は?」とか「服を買うときに一番気にするところは?」とか、ブラトップとは直接関係のない質問を混ぜているところ。これも共感を呼ぶためのメソッドだ。
・UNIQLO TRY #2 HEATTECH
UNIQLO TRY第2弾。こちらは「ヒートテック」という発汗した汗を吸収して熱を出すという製品。このときは、グローバルに展開したいというユニクロさん側の希望があった。じゃあ、世界中の人にヒートテックを配ることができないかというところから話を始めたという。すぐにユニクロさん側が世界中の人に「ヒートテックをプレゼント」というしくみを整備。それに対して中村さんたちが「世界中のビフォア・アフターが見えたらおもしろいんじゃないか」とこの企画を提案。
ユニクロがある国であろうとない国であろうと、ヒートテックが欲しい人は「なぜ、どういうふうに欲しいのか」をビデオに撮って送ってください。送ってくれたら、ヒートテックを送ります。で、よかったら、着てみて感想を送ってくださいと。投稿された映像や画像はサイトの地図上に配置され、クリックすると映像を見ることができる。
やってみて、動画や画像を投稿してもらうというのは、インセンティブがあったとしても、まだ難しい。だまだ敷居は高いなと感じたという。それでも、やはり日本より海外のほうが投稿率は高いようだ。
・INTERNAVI REALIZATION
「広告は結局、芸だと思う」と中村さんはいう。見ていて、おおっとか、これってすごいとか思うもの、気持ちがいいものを提示したい。そう語る中村さんの最新のコンテンツ、INTERNAVI(Honda)のサイトから。INTERNAVIには搭載車の位置情報をGPSサーバに送る機能がある。その情報を集めて可視化したらどうなるか?
真っ暗な画面上に点(搭載車の位置情報)が次々と現れ、道になる。しまいには地図が現れる。
・DRIVE LAPSE
ルートを選んでOKを押すと、カーナビの画面と連動して、リアルな映像が再生される。映像は、一眼レフのデジカメで連写した静止画をつないだもの。
「なんとなく、きれいだなと見てもらえればいい。これを最初のきっかけに、そのあとでこのコンテンツってなんなんだろうと考えてもらえばいい」と中村さん。
と、ここまで見せて、残り10分となってしまった…。急ぎ、木谷さんの事例紹介にバトンタッチ。
■どんなものを作ってきたか― 木谷さん編
NECの携帯電話Nシリーズのブランディングサイト。
NEC側にすでに、何でもできる携帯=ライフブラウザ、それを表現する「世界が手の平で動き出す」というタグラインがあったので、Webを作ってという話になったとき、世界の“今”をビジュアライゼイションすればいいのではないかと思ったという。
サイト上には、ブログやニュースのキーワードからその日の感情を分析し、40種類以上の動きで表現するMEDIA MANが登場する。右上のフェイスマークはその日のニュースサイト、ブログのキーワードをもとに笑顔になったり、泣いてたり。解析はNECの感情理解エンジンを使っている。1日1回更新。これがアーカイブされていき、日付をクリックするとその日のMEDIA MANが登場する。
感情理解エンジンはNECの携帯に搭載されていて、たとえば、メールの文面を解析してメールのサブジェクトに「涙」「ハート」などのマークが自動で点いている。それが楽しいメールなのか、悲しいメールなのか一見してわかるというもの。
MEDIA MANの身体の構造は毎日のニュースからなり、感情を現す動きは、感情理解エンジンを使って世界中のブログをスキャンして出している。ただ、「焦り・喜び・怒り・悲しみ」とあるうち、最初は「悲しみ」と「焦り」ばかりになってしまっていたが、「最近、やっと笑顔が出ています。」ちなみに、MEDIA MANにはmobileアプリ版、ブログパーツ版もある。
携帯のコンテンツでスペシャルサイトを作るというとすごく複雑なインタラクションを作りがちだが、実際にユーザーはそんなものは求めていない。シンプルで、こちらが押し付けるのではない、だけどブランドをきちんと刷り込ませるものを作ったつもりだと、木谷さんはいう。
・井上雄彦/最後のマンガ展
マンガ家の井上雄彦さんの美術展(上野、2008年5月)の特設サイト。
このサイトはインタラクションは全然なく、写真を3日に1回更新する。「今日の井上雄彦」(というより、美術展の進捗を公開日まで少しずつ見せていく)というもの。井上さんがなかなか描かない(いなくなったり?)ので、画がなくなり、しまいには木谷さんの靴まで登場することになったり、 打ち合わせで悩んでいる井上さんの写真ばかり載せていたらファンの人から「井上さんに打ち合わせばかりさせないで!」というメールが来たり、と思ったより大変だったという。
美術展のためのWebサイトは絶対に必要なものではない。しかしファンはどういうものを描くんだろうと少しでも情報が知りたいだろうし、美術展の運営サイドからすればWebであまり見せすぎても困るわけで。どこまでをどう見せるか、のバランスが難しい。
もちろん、美術展のためのWebサイトでなくとも、サイトでは「見に来てくれる人のニーズ」と「クライアントの伝えたい情報」のバランスをうまくとることが重要だ。さらに、そこに作り手の表現したいことも加わることになる。
「Webを作るとき、どうしても自分たちの技術や考えばかりになって途中からユーザーのことを考えなくなってしまう。結局、“おもてなし”ができてないということになる。でも、Webはアートじゃない。これくらいなら来てくれた人に喜んでもらえる、そのちょうどいいところを考えていけるといいなと思う」(木谷さん)。
・ケートラ
Hondaの携帯用コンテンツ。携帯に登録すると自分のモバターが現れる。そのモバターがみんなのケータイを乗り継いで勝手に歩き回る、いわゆる「モバター君の放し飼いコンテンツ」。
モバターが旅先で買ってくるお土産や送ってくる日記を楽しむ、いわゆる“ゆるい”コンテンツだ。「移動することを楽しんでもらう」ということを企業理念に掲げているHondaのいいたいことをうまく表しているといえる。
ちなみに、ゆるキャラのモバター、お土産などのデザインも木谷さん。キャラクターグッズ化して不労所得を狙いたいらしいので、ケートラをやっている人は問い合わせボタンで「モバターかわいい!!」と、ぜひコメントしましょう。
また、時間の都合で、会場では紹介できなかったものもあった。
・超短距離1M走
ナイキ主催の「超短距離1M走選手権」。この選手権とは、人類最強の瞬発力を競うというもので、1Mをどれだけ早く走れるかを競う。
この大会への参加は無料で開催期間中であれば、各会場で自由な時間に挑戦ができる。そして、その結果はWEB上でリアルタイムにランキング表示される。もしかしたら世界最速の称号を得る事が出来るかもしれないと誰しもが夢見る事ができる企画。
・booing.jp | 全日本ご不満放出選手権(公開終了)
日本労働組合総連合会の特設サイト。
このサイトはユーザーが不満を書き込むとそれがエネルギー(不満注入)として、サイトのキャラクターである「トブ太くん」 に不満を注入し、不満でふくらんだトブ太くんをクリックで飛ばし、その距離をランキング表示する。
「あなたの不満を少しだけ解消します」というサイト。
■みんなで考えよう
あと7分ですが、ここでやっと本題に…。中村さん、木谷さんが思う疑問をみんなで考えてみよう!
「Web広告って、結局みんな見てなくね?」
「これは改心の出来だと思ってアクセス統計を見ても、ある程度より訪問者が増えません。はじめはバーンといっても、投資効率の規模にだいたい比例しています。そこをアイデアでブレイクするのは、かなり難しい、と感じるようになってきました。ここまでの作品紹介も、すごく反響がよいのだけど、それは、誰も、これらの作品を、今まで見たことがないからじゃないでしょうか?」(ここで、客席から「ぜんぶはじめて見た」というコメントも…)「たとえば、自分の彼女に、自分の作ったコンテンツが『ねぇねぇこのサイト、すごいの!知ってる?』って言われたことがこれまであったでしょうか?」(中村さん)
確かに微妙かも…。
たとえば、友だちのブログやmixiの日記は読む。何かを購入しようとするとき、情報収集のために、情報を置いて待ち受けている「Pull型」のサイトを見るということはあるだろう。でも、どちらかというと新しい情報を押し付ける「Push型」、つまりスペシャルサイト的なものは本当に必要なのか?という根源的な疑問符が生じている、という。
「【?】なぜ、見ないのでしょうか?」
中村さん:つまらんから。
木谷さん:めんどくさいから。
…マジメに答えていないように見えるので、要約すると。
中村さん:「たとえば、テレビのCMなら、ドラマやバラエティなど、エンタメ属性を持つコンテンツ(番組)の中にある。中心になるコンテンツがあるから間のCMも見てもらえる。そのパイの中で、おもしろさを拾ってもらえば、充分。ところが、WebのスペシャルサイトはテレビでいえばCMの部分と同じ。なのに、ユーザーが自分からググったりリンクをクリックして、そのURLに訪れなくてはいけない。本当に、そんなことをするのだろうか?つまらん属性である時点で、多くの人に見てもらないのでは?」
木谷さん:「情報系のものは見るけど、自分たちが作っているようなスペシャルサイトは見ない。いったらマウスを動かさなきゃいけなかったり…。そういう面倒なことはしないなと。テレビは寝ながら見たい。だから、Webもそんなに操作ばかり求められるとツライ。」
「【?】では、どうすればよいか?これから、どんなものを作ればいいのか?」
木谷さん:
1. 深く掘る。
2. 他も掘る。
深く掘る→Webをとことんやる。
Webならいろんな人に見てもらえると考えるのはもうやめて、見る人が少ないのはわかった、それでもWebをとことんやる、という方向性。 「Webはもっとこれから、対個人になっていくと思う」と木谷さん。これは、中途半端にたくさんの人に見てもらうというより、とことん深く、少なくとも1人にでも感動してもらえたらいい。100万人を捨てて1人を思うという路線。
他も掘る→せっかくなんで、幅を広げてみる。
提案するときに、Web以外のことでもいいアイデアが思いついたらどんどん提案する。ただ、いきなりじゃなく、ところどころ、Web以外のことでも提案できそうな部分で少しずつ出していく。自分の土俵を踏み越えないで、そこから拡散していって徐々に、というスタンス。
ちなみに、木谷さんは後者のタイプだという。
中村さん:
1. スペックサイトばかりつくる。
2. 世界に目を向ける。
3. Web以外のものを作る。
4.「番組」を作る。
1.スペックサイトばかり作る―(ただ、これは中村さんがやることではないので、割愛しました)。
2.世界に目を向ける―「ラストガイ」「UNIQLO TRY」は海外からのアクセスが多いという。日本のパイが世界のパイに変わったときの爆発力はすごい。英語に翻訳しなくとも意味がわかる、非言語的(ノンバーバル)な表現、ストーリーを展開することで世界中から人がくれば、ブレイクスルーできる。
とはいえ、そのノンバーバルな表現こそが難しいといえる。中村勇吾さんの作品を、一度そういう視点で見ると勉強になるとのこと。勇吾さんの作品は、クオリティもすばらしいが、常にこのポイントを外していないので、どれも世界規模のビューを得られるコンテンツになっている、という。
3.Web以外のものを作る―たとえば、ケータイコンテンツ。携帯でネットにアクセスしている人は、層が若い。自分から情報を取りにいこうと、楽しさを享受しようという気迫が違うという。いままでは、携帯の各端末に対応しなければならないという障壁があったが、今日では、Flash Lite1.1に対応するだけで、かなりの層をカバーできる。Webクリエーターは、どんどんケータイに参入すべきだという。
「番組」を作る― 「Webクリエイターの間では、“すごい”コンテンツがもてはやされる傾向があるが、“すごい”と“おもしろい”は違う。“すごい”は長続きしない。」
プレゼンだと短時間の勝負なので“すごい”のほうが勝ってしまう。でも、そこを踏みとどまって、“インパクトはなくても、ちゃんと面白い”作品作りのほうにいこうよと。Webの新陳代謝が激しいのは、「すごい属性」がほとんどだからではないか。長いつきあいのものを作らないと、このままでは、他の広告と同じ「嫌われ者」になってしまうと中村さん。
たとえば携帯コンテンツで考えるとメガヒットしているのは、モバゲーのようなエンタメだったり、携帯小説のようなストーリー属性が強いもの。「イイタイコト」そのものがエンタメだ。そういう考え方なくして、みんなに共感してもらいたいというのは難しい。広告としてヒットさせたいなら、立ち位置のスタンスを変えてみる必要がある。
また、エンタメを作るのなら、どれを作ればよいか、絞りきれない。ターゲットをもっと調べる必要がある。
ユーザーが何を求めているかを知るため、アンケートをとることが大事だ。 そこで、一例として具体的なツールを紹介してくれた。Firefoxのアドオン「SBMカウンタ」。そのサイトにソーシャルブックマークを貼っている人たちの数と中身が見れる便利ツールだ。
(※ただ、ソーシャルブックマークユーザーは、一般的なアンケートより意見の偏りが激しい)
「そろそろ、この窓の向こうにいる人たちは何を考えているのかと、真剣に考えるときが来たのだと思う。」(中村さん)
ファイブミニッツプレゼン レポート
「ビデオブログは最強の販促ツールだ!」
ジェットダイスケ(ピーヴィー株式会社)
ビデオブロガーのジェットダイスケさん。ビデオブロガーって何?と思う人もいるかも?
簡単にいうと、ビデオを使ってブログする人ですね。が、ジェットダイスケさんは単にブログをビデオで綴ってるわけじゃなくて、いわゆる商品レビューをビデオ(動画)でアップしている。この商品レビューがまた絶妙。気がついたら、どこかでジェットさんの動画を見てたという人も多いと思う(自分も以前カオシレーターというシンセを調べてて、ジェットさんの動画を見てました)。
今回のプレゼンは、Web動画を使った販促とコミュニケーションについて。
必殺技「ジェットカット」も伝授してくれるそうだ。
そもそも、動画コンテンツを本格的に始めたのは、Niftyの「Podcasting Juice」(2006年1月~)がきっかけ。この中でお笑いをネタに動画コンテンツ「なにわともあれ」をスタート。狙いははまってiTunes 人気ランキングにて1位を獲得、メディアでも取り上げられる。が、単体では収益の目処はたたず。じゃあ、このままやってても?
と、そのとき大転換を計ったという。もともと口コミマーケティングの「ぼくたちONEDARI BOYS」に参加していたジェットさん。企業から商品を提供してもらい、それをレビューする。このONEDARI BOYSの活動スタイルを動画に応用してみようと。結果は成功。ジェットさんが紹介した商品は売れる。
でもこれは、ただなんとなく動画を使ったからではなく、「自分で購入したガジェットもジャンクフードもおもしろいと思えばなんでも動画でレビューした」からだ。それによって、「この人っておもしろい」とか「この人のこのセンスなら」というのが確立して、そのジェットさんが勧めるならってことになるのではないか。YouTubeやニコニコ動画などの人気ユーザが販促ツール化し始めている状態だ。
状況分析はおいておくとして、必殺技「ジェットカット」を。ジェットさんが会得した、撮った動画からムダな情報を間引いていく引き算型のビデオ編集技法だ。ポイントは、再生時間/ファイル容量を抑え、Web配信向けにコンパクト化すること。
・「えー」「あのー」などのムダ
・ 手際が悪いムダ
・ 沈黙している時間のムダ
・ 文脈から逸れているムダ
・ その他、本質以外のすべてのムダ
たとえば、5分の動画をこれらのムダを省くことで1分半程度にすっきりまとめてしまうという。QuickTime Proを使って、その場で実演。そして、それがそのままQuickTime Proの商品レビューになってました…。
最後に、タナカさんがサングラスの謎を質問。なんと、これもファッションではなく、必要な演出でした。「素人ならではの、泳ぐ視線を隠すため。」ジェットさん、すご過ぎです。
ちなみに、ジェットさん。動画をアップしてくれるユーザーに何か還元できるしくみや動画を活用した販促サポートサービスを準備しているそうです。
「BOW cARd」
吉川佳一(ボストーク株式会社)
吉川さんはAR技術と名刺を組み合わせた、新しいコミュニケーションツール「BOW cARd」の紹介。AR(拡張現実)技術とは、ビデオやカメラで映した現実のものにコンピュータ上で合成処理を施して、あたかも現実を拡張したような表現を実現するもの。BOW cARdは、そのAR技術を使ったコミュニケーションツールだ。
サイトにアクセスし、BOWチームの名刺のウラにある画像をWebカメラで撮ると、その上にアバターが現れる。
そもそも、11月に立ち上げた「BOW」という新しいチーム用に、何か話題になる、遊べるような名刺を作ろうということから始まったという。おもしろいのは、ただアバターが現れるだけじゃなく、それがコミュニケーションのツールになっていることだ。
アバターは名刺によって違うものが出てくるようになっている。そして、こうしてアバターどうしが出会うと互いを認識し、挨拶のダンスを。動画でお伝えできないのが残念だが、画面ではアバターたちがぴょこぴょこ跳ねている。
アバターの上に出るメッセージはTwitterの自分たちのアカウントから取ってきたものだという。近づいた相手向けのメッセージが引っ張られてきたりするので、会話をしているような感覚がある。
でも、名刺がなくちゃできないじゃん。って思ったアナタ。サイト上で自分のアバターを登録することもできるので、いつでも参加できますよ! 作成したカラーコードをプリンタに出力し、カメラで撮ると登録したアバターが表示される。自分のTwitterアカウントを紐づかせることもでき、BOW cARdに参加できるのだ。
デザインも自分仕様に!と、アバターのカスタマイズの様子を引き続きムービー。直前にジェットカットのさばきっぷりを見たせいか、吉川さん恐縮気味。牛のいわゆるホルスタイン模様を丹念につけていく様子に、どこからとこなく「そこ、いらないじゃん」の声が…。
ちょっとおもしろいコミュニケーションツール、BOW cARd。今後もいろいろ展開を考えているというので、期待だ。
ゲスト
中村洋基(株式会社 電通)
nakamurahiroki.com
テクニカルディレクター
(株)電通でWebやバナーを作る。幼少期、幼馴染の女の子のパンツを盗もうとして、番犬に噛まれ、Webの可能性に目覚める。
18歳で上京。22歳で留年。高度なプログラミングが苦手なので(例:三角関数)、バナーばかり作っていたら、目立った。得意技は賞を取ること。苦手なことは、資産運用。
■受賞歴
東京インタラクティブアドアワード、
ロンドン広告賞、 カンヌ国際広告祭など国内外で数々の受賞。
木谷友亮(カイブツ)
http://www.kaibutsu.jp
日本デザイン専門学校卒業後、グラフィック広告の制作プロダクションに入社。 電通インタラクティブ・コミュニケーション局(IC局)への出向を経て、 2005年独立。2006年株式会社カイブツを設立。
■受賞歴
カンヌ広告賞 金賞・銀賞、One show 金賞、NYADC銀賞。
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ピクルス / マーケターのバディ
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