menu

ブログ「明日のマーケティングは、今日の発見から。」

パーパスでマーケティングの差別化を!思わずファンになるブランドストーリーを生み出すために

パーパスでマーケティングの差別化を!思わずファンになるブランドストーリーを生み出すために

パーパスは企業の存在理由であり、仕事に取り組む上での「志」です。このパーパスを活用することで、マーケティングの差別化につながり、ファンを生み出すブランドストーリーを作れます。本記事では、パーパスの見つけ方や具体的な企業事例をご紹介します。

最近、パーパスという言葉をよく聞くようになりました。
本屋のビジネス書コーナーでもパーパスに関する書籍をよく見かけますが、お近くの書店にはありますでしょうか?

パーパスは企業が持続可能な競争優位性を獲得するための重要な要素の1つであると言われています。

パーパスは会社組織全体で取り組むことですが、その中心となるのは「マーケティング」です。

本記事では、マーケティング活動におけるパーパスの重要性と自社がパーパスドリブンな会社へと変革するためのマーケターの役割についてお伝えします。

パーパスの定義

まず、パーパスとは?
ひと言でいうと、パーパスは企業の目的(=存在理由)のことです。

企業は何のために存在するのか?
なぜ、この仕事に取り組んでいるのか?
なぜ、この商品を市場に届けたいのか?

仕事に取り組む上での「志」といってもよいでしょう。

しかし、この定義ですとビジョンやミッションと何も変わらないではないか、と思われる方もいるのではないでしょうか?

経営戦略の立案の際には、前提としてビジョンやミッションを設定し、目指す姿や果たすべき役割を示さなくてはなりません。

では、これらとパーパスの違いは何なのでしょうか。

結論から先に言いますと、パーパスはビジョン・ミッションの中にすでに存在するものだと考えてください。

ビジョンとは企業の目指している「なりたい姿」で、ミッションはそのための「使命」です。そして、パーパスは企業がそのビジョン・ミッションを目指す理由です。

もしパーパスが不明瞭だと思うのなら、ビジョン・ミッションを見直して、もう一段深く掘り下げて、「なぜ」を自問することでそこからパーパスが明確になってくるでしょう。
 

パーパスが注目される背景

なぜ今、パーパスが注目されるのか?

その理由は、顧客ニーズの変化にあります。

私たちの身の回りはモノで溢れかえっています。
大体のモノは100円ショップで手に入ってしまうような時代です。

例えば、品質も良くて何年も着ることができるブランドの3万円以上のコートと品質的にそこそこでも1年くらいは十分に着られる1万円以下のスーツがあったします。

あなたはどちらを選びますか?

後者のように「毎年気分にあったコートを買い替えたい」という人も多いと思います。
廃棄の問題はありますが、ユニクロなどではリサイクルボックスを置いて環境対策にも取り組んでいますので、罪悪感をそれほど感じずに毎年買い換えることができます。

つまり、従来はブランド品の主な訴求点であった品質やデザインが、現在では消費者にとっての重要な価値になっていないということです。

では、消費者はブランドにまったく価値を見出さなくなったのでしょうか?

そうではありません。ブランドに求める価値の中身が変わってきており、その求める価値の中身がパーパスなのです。

この背景こそが、マーケターがパーパスを追い求めなくては強いブランドを構築することができない理由です。

パーパス、ビジョン、ミッションの位置づけ

もう一度パーパスとは何かを有名な3人のレンガ積み職人の話から考えたいと思います。

このイソップ寓話のストーリーは、3人のレンガ職人にそれぞれ何をしているのかを聞いた時に、別々の答えが返ってきたという話です。

3人のレンガ職人の反応

3人目のレンガ職人の答えがビジョンです。明確なビジョンを持つことでモチベーションが高まり、期待された成果を上げられることの教えです。

最後には3人目のレンガ職人の名前は大聖堂の壁に刻まれる名誉を得たという後日談もあります。

では、このものがたりにパーパスの視点を加えるとどうなるでしょう。
「なぜ、大聖堂を建てるのか?」まで掘り下げるのです。

仮に「街の人たちに(礼拝で祈りを捧げる場所を提供して)幸せな日々を」といったパーパスであった場合を想定してみましょう。

「街の人に幸せな日々を提供する」という志を持つことで、どのような行動が期待できるでしょうか?

購入しているレンガの製造会社が、過酷な労働条件で街の労働力を搾取していたら、または、少しでも工期を短縮させるためにレンガの接着に速乾性の有害なガスを発生するモルタルを使用していたら、彼らのパーパスは達成できませんよね。

つまり、ビジョン・ミッションの本質を追求することによって生み出されたパーパスは、行動を規範するようになるのです。

もう一点、ビジョンとパーパスには明らかな違いがあります。

ビジョンは、将来のあるべき姿(大聖堂を建てて街の人々を幸せにする)であるのに対してパーパス(町の人々に幸せな日々を提供する)については、現在のあるべき姿を含んでいます。

将来の結果だけでなく、現在進行形のプロセスにおいての約束であるということです。

マーケティングとパーパスの関係性

マーケターは、自社商品が消費者からどのように評価されているのかを絶えずアンテナを張り巡らせていなくてはなりません。

パーパスは外側からの視点で自分たちを映し出すことによって見えてくる姿です。消費者の視点で自分たちのパーパスを見つめることをしない限り、それはまさに絵にかいた餅になってしまい、消費者の心には響かないのです。

消費者視点での思考を求められるという点からも、マーケターの役割が非常に重要であることは明らかでしょう。

マーケティングの大御所であるフィリップ・コトラーは、従来の4P(Product,Price,Place, Promotion)に加えて、もう一つの「P(=Purpose)」が必要だと述べています。

マーケティングミックスを支えるベースとなるものが企業の社会的使命を達成しようとするパーパスであり、それによってブランドが確立されるのです。

顧客のニーズにもっとも敏感に反応できるマーケターが組織全体のパーパスの追求に意識を向かわせることで、マーケティングの目指すべきブランド力の向上につなげることができるでしょう。

また、先ほどブランドに求められる価値が変わってきたと述べました。
パーパスを追求することで、そのブランドには強いこだわりが生まれます。
そのこだわりを追求することで、その志はものがたり(ストーリー)になります。

そうやって出来上がったものがたりに、消費者は共鳴し、心を動かされます。ストーリーに共感し、ワクワクし、応援したい、と思い、そしてファンになるのです。

現在のモノにあふれた社会においては、このようなストーリーに支えられたブランドでないと持続性を維持することはできないといっても過言ではないでしょう。パーパスからブランドストーリーが生まれてくるのです。

パーパス活用の成功事例:旭酒造株式会社(獺祭)

パーパスから生まれたブランドストーリーを自社商品のマーケティングに活用している企業の事例として、大吟醸酒「獺祭」を製造する旭酒造株式会社(岡山県)を取り上げたいと思います。

当時、倒産寸前であった旭酒造の経営者は「本当に美味しいお酒を造る」ことをパーパスにして大吟醸酒「獺祭」ブランドを立ち上げました。

日本酒製造の専門家たちからは無意味と否定された二割三分という精米歩合(磨き)や日本酒に適した山田錦のみを使用するなどとことん美味しいお酒造りにこだわり続けました。

その挑戦は日本酒革命と言われ、実際の美味しさも含めて評判となりテレビ番組で取り上げられることで相乗効果を生み、「獺祭」ブームとなりました。

海外でも評価を受け、「DASSAI」は世界の高級ワイン並の高値で取引されるブランドとなっています。数多くの歴史ある大吟醸酒の銘柄がある中で、ほんの20年くらいの間に世界に通用するブランド吟醸酒となりました。

メディアで取り上げられ話題を呼び、普段日本酒を呑まない人でも興味を持つブランドになったのは、経営者の「美味しいお酒を届けたい」という志があったからです。

そして現在は、日本酒を世界の高級ワイナリーに対抗するブランドにするという次の志へと向かっています。そこに至るまでに、杜氏との契約解除などの経営上の危機や様々な失敗がすべてストーリーとしてブランド資産になっています。

パーパスに共感した顧客がファンとなってブランドを育ててくれるのです。

前述の通り、組織におけるパーパスの追求にはマーケティング部門の役割は非常に重要です。なぜなら、顧客の本質的なニーズに対しての働きかけにこそ、パーパスは存在するからです。

獺祭が本当に美味しいお酒を飲みたい、というシンプルなニーズに働きかけることでブランド価値を高めたことからもわかると思います。

パーパスを見つける方法

パーパスは社会においての企業の存在意義を問い直すものです。

企業が社会の一員として、どのように貢献するのかを明確にすることで、持続可能な企業・ブランドとすることを目指します。国連が定めた17の持続可能な開発目標SDG’sは、パーパスを定める上での指標となりうるものでしょう。

ただし、自社の製品がSDGsの開発目標に貢献できそうだからといって、安易にパーパスに取り込めると考えるのは避けたほうがよいでしょう。

これまでも述べてきたように自社の事業が本当にそのために存在するのか、自社の志とするものなのか。

このことを自問し、そして、徹底的に考え抜く必要があります。
その覚悟や志に消費者が共感しワクワクするからファンになってくれるのです。

副次的な効果でなく、その活動がブランドの中心コンセプトとなるべく活動が求められます。

まとめ:パーパス浸透のためのマーケターの役割

中小企業においては企業ブランドと製品ブランドの距離が近く、消費者ニーズの感度を常に磨いているマーケターはパーパスの推進役としての役割を担う必要があります。

それと同時にマーケターだけでは企業のパーパスを浸透させることはできません。
経営者の巻き込みも含めたインターナルマーケティングが重要となってきます。

自社のパーパスを社員や関係協力者と共有・浸透させるのです。

パーパスの共有・浸透は、ブランド強化という効果だけに留まりません。
社員のモチベーションアップや優秀な人材の確保といった内部体制の強化にも重要な役割を果たします。

インタナール・エクスターナルのマーケティング活動をパーパスという同じメッセージによって実行することで、組織力とブランド力の強化を図りましょう。

そうすれば、真に持続可能な企業、ブランドへと成長させることができるはずです。