
STP分析とは?2つの事例を交えてやり方を徹底解説
「マーケティングを成功させるためにはSTP分析が重要!」とよく聞くものの、実際にどうやって分析すればよいか分からない…本記事をお読みいただいている方の中にも、上記のようなお悩みを持っている方が多いのではないでしょうか。
STP分析とは、切り分けた市場の中で誰に対しどのような立ち位置で事業(サービス)を展開するか分析するフレームワークです。
そんな事業を伸ばすために欠かせないSTP分析ですが、重要性だけが先行して広まっており、適切なやり方までは分かっていないケースが多いのも事実です。
そこで本記事では、STP分析を実施する目的とやり方について、具体的な事例を交えて解説していきます。「今までなんとなくSTP分析をやっていた」「名前は知っているけどやり方がいまいちわからない」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
STP分析とは
改めてSTP分析とは、
- セグメンテーション(Segmentation)
- ターゲティング(Targeting)
- ポジショニング(Positioning)
それぞれの頭文字をとったフレームワークです。
マーケティング戦略を立案するうえでは、市場・競合調査といった環境分析の後にSTP分析を行うのが一般的な流れです。STP分析を行うことで、顧客に選ばれる商品を設計したり、効果的な集客プロモーション戦略を考えることができます。
一方でSTP分析ができていないと、「誰をターゲットにしているか」「競合とどう違うのか」が曖昧になり、顧客から選ばれにくい商品やプロモーションになってしまいます。
マーケティングの中でも上流工程の仕事に携わっている(これから携わりたい)方は、必ず押さえていただきたい分析手法ですので、ぜひこの機会に覚えておきましょう。
STP分析の目的
STP分析の最終的な目的は、他社と差別化し市場の中で独自のシェアを獲得することです。
そのために行うのが、市場の細かな切り分け(セグメンテーション)と狙うターゲットの明確化(ターゲティング)、ポジションの確立(ポジショニング)です。
ポジションが確立され他社の商品と差別化できれば、競合と戦うこともなく、資金を無駄にすることもありません。
一方でSTP分析ができていないと、顧客側からしたら自社商品と他社商品の違いがわかりません。どちらの商品も同じ性能であれば、ターゲットの奪い合いになり競争も激化します。
つまりSTP分析は、自社の独自性を発見して競合との争いを避けるために必要なステップということです。それが結果として、自社の商品が顧客に選ばれる確率が上がり、リスクを最小限にしつつも売上を伸ばすことできるわけです。
STP分析のやり方
この章ではSTP分析のやり方について解説します。
- セグメンテーション
- ターゲティング
- ポジショニング
セグメンテーション
セグメンテーションとは、市場の中のニーズや顧客の属性を細分化することです。細分化することで、自社がリソースを集中投下するべきターゲットが見えてきます。一方で、適切に細分化できていないと、「競合がひしめき合う市場で戦っていた」なんてことも起こりうるので注意が必要です。
市場を細分化する代表的な切り口には、以下の4つがあります。
- 人口動態変数(デモグラフィック)
年齢や性別、職業、所得水準、学歴など顧客の属性による切り分け
- 地理的変数(ジオグラフィック)
住んでいる地域や気候、人口密度、文化など地理的な要素による切り分け
- 心理的変数(サイコグラフィック)
ライフスタイルや価値観、パーソナリティなど感性による切り分け
- 行動変数(ビヘイビアル)
購買ルートや購買頻度、製品知識などの製品に対する知識・行動による切り分け
セグメンテーションは上記のように様々な切り口から細分化し、自社に適したターゲットを見つけるための役割があります。
中でも特に重要なのが3つ目の心理的変数です。理由は、顧客が持つ価値観や日頃のライフスタイルを分析することで、顧客が本当に欲しいものを発見することができるからです。
例えば、「20代男性」と切り分けたとしても、人それぞれ欲しいものはまったく異なりますよね。服にお金を使う人、車にお金を使う人など、求めるものは様々です。
しかし、心理的変数の価値観やライフスタイルで切り分ければ、ある程度顧客の求めるものも似てきます。
つまり、集中して狙うべき市場が見えてくるということです。
上記で解説した4種類の切り口のように、様々な視点から切り分けるようにしましょう。
ターゲティング
ターゲティングとは、市場をセグメントした後に「自社がどこで勝負をするのか」を絞り込むことです。
万人受けのキャッチコピーは結局誰にも響かないのと同様に、ターゲットを広く設定しすぎてしまうと、その商品はありきたりなコンセプトとなり他社との違いが分かりにくくなってしまいます。
また二兎を追う者は一兎をも得ずという諺があるように、細分化したセグメントの中で複数のセグメントをターゲットにしてしまうと、消費者にメッセージを届けてもなかなか自分事化してくれません。
そのため、適切なターゲティングにより市場を絞り込むことで、商品・サービスのコンセプト設計や販路検討などの戦略が立てやすくなり、後述するポジショニングより他社との明確な差別化を実現できます。
自社の限られているリソースの中で利益を最大化するためには、ターゲティングで無駄のない戦略を設計していくことが重要です。
とはいえ、ターゲティングするなら何か基準が欲しいですよね。
そこで役立つのが「6R」と呼ばれるターゲティング選定に最適なフレームワークです。
- 有効な市場規模(Realistic Scale)
- 成長性(Rate of Growth)
- 競合状況(Rival)
- 波及効果/顧客の優先順位(Ripple Effect/Rank)
- 到達可能性(Reach)
- 測定可能性(Response)
ここで重要なのは、6つの指標を見て総合的に判断することです。上記の項目に当てはめて分析することで、精度の高いターゲティングを定めることができます。
例えば、市場の成長性はあっても到達可能性がなければ、顧客にアプローチできないので売上につながりません。逆も然りで、到達可能性はあっても市場の成長性がなければ事業は伸び悩みます。
上記の例のようにどれか1つが飛び抜けているということではなく、バランスが良くかつ実現度の高さを重要視すると良いでしょう。

ターゲティングに迷ったら「6R」を活用してみましょう。
ポジショニング
ポジショニングとは、ターゲットとして設定した市場の中で競合と差別化ができる自社の立ち位置(ポジション)を明確にすることです。
わかりやすい例だと価格訴求があります。市場の中で自社の製品の価格が最も安ければ、「安い」という面でポジションを確立できるわけです。
このように他社より優位に立てるポジションを確立するためには、ポジショニングマップを作成するのが効果的です。
ポジショニングマップとは、縦軸と横軸で2つの要因を決め、優位性のあるポジションを見つけるために使われます。
アパレル業界で例えると次の通りです。
- 縦軸上:高価格
- 縦軸下:低価格
- 横軸右:シンプル
- 横軸左:派手目

低価格でシンプルには「ユニクロ」、高価格で派手目には「ルイヴィトン」が当てはまるような感じです。このように競合の立ち位置をマップで見ることで、自社が参入するべきポジションが分析でき差別化ポイントがわかります。
ここでの注意点は、その差別化に顧客ニーズがあるかどうかです。自社の独自性で差別化したとしても、そこに顧客ニーズがなければ商品が売れることはありません。
例えば、経費精算システムのポジショニングマップを「縦軸:価格、横軸:機能」で作成したとします。低価格×低機能、高価格×高機能の商品はたくさんあるから、高価格×低機能の商品を打ち出そうとしてもそこには顧客ニーズはありませんよね。

そのため、縦軸と横軸は1パターンだけでなく、複数パターン設計することで、多角的に自社のポジションを決めていくようにしましょう。
顧客ニーズがあり、競合と差別化できる立ち位置をポジショニングマップで分析しましょう。
STP分析によって成功した2つの事例
続いては、STP分析の事例を解説します。
今回は2つ事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
いろはす
いろはすは日本コカ・コーラが販売するミネラルウォーターです。
500mlミネラルウォーターの市場は、国内外合わせてかなり競合が多く、製品もたくさんあります。その中で一定のシェアを確立している「いろはす」は、どのようなSTP分析を行っているのか見ていきましょう。
従来のミネラルウォーター市場であれば、心理的変数の「産地・水質にこだわりがある人」だったり、人口動態変数と行動変数を組み合わせて、「スーパーによく行く主婦」や「自販機を利用するサラリーマン」など、様々な切り口でセグメントすることができました。
しかし日本コカ・コーラは、消費者に環境意識が芽生えていることに目をつけ、今までになかった「環境意識が高い層」というセグメントに対してターゲティングしました。その結果、差別化しにくいミネラルウォーター市場でも大ヒットを記録し、発売からわずか3ヶ月で1億本の販売を達成しています。
安さを求める人から見たら「いろはす」は購入する対象にならないかもしれませんが、環境に強い価値観を持っている人であれば「いろはす」を選択すると言えます。
つまり、お水が飲める以外に「環境に貢献できる」という価値があるのがいろはすの差別化ポイントです。競合性が強いながら、独自の価値で一定のシェアを獲得し成功したのが、いろはすのSTP分析と言えます。
CLAS
CLASは家具・家電のサブスクリプションサービスです。
今まで家具・家電は購入するものでしたが、頻繁に引越しする人にとっては買い替えや廃棄コストなど様々な問題がありました。
そこでCLASは、家具市場の中でも「こだわりがない層」や「頻繁に引越しをする層」でセグメントを切り分けてターゲティングをし、月額500円からのサブスク形式にすることで一定のシェアを獲得することに成功しています。
また配送・設置費用を月額料金に含めることで、競合他社と差別化しています。
まとめ
最後にまとめます。
STP分析は、事業・サービスの成長に欠かせないマーケティングフレームワークです。STP分析をしっかり行うことで、顧客が自社のサービスを選ぶ理由が明確になり、大きい市場の中の一定のシェアを獲得することができます。
自社が戦うべきところがはっきりするので、人材や資金などのリソースを集中投下し、スピード感を持って事業を伸ばすことも可能です。
これから新規事業を立ち上げる方や事業をすでに始めたけど市場のポジションが不明瞭な方は、ぜひこの機会にSTP分析を行ってみましょう。
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