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ドラッカーの考えるマーケティング/イノベーションとは?「マネジメント」の書籍から本質を読み解く

更新日:2023/12/05

マーケター診断(リード獲得用)

「マネジメント」とは、著名な経営学者ピーター・ドラッカーが1974年に発行した著書です。

ドラッカーは欧米のみならず、日本国内でも多くの企業人や経営学者に影響を与えており、言わば「経営のバイブル」として根強く支持されています。
2009年には「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(略称:もしドラ)」でも話題になったため、ご存じの方もいらっしゃることでしょう。

本著では社会全体から見た「企業とは何か?」が事細かく書かれています。
内容はタイトルの通り「マネジメント」で経営についての基本原則が主ですが、冒頭ではマーケティングについても触れられています。

ドラッカーはマーケティングを「企業の第一の機能」として定義しており「企業の第二の機能」としてはイノベーションも紹介されています。
本著で紹介される「イノベーション」は、企業のあらゆる部門や活動に及ぶと解説するとされており、マーケターとして働く人にとっても関係のある話となってきます。

また、本著では一貫して企業の目的は「顧客の創造」にあると強調されており、マーケターが日々悩む「顧客理解」について迫るヒントも散りばめられています。

本著は、マーケティングのみならず経営・社会学などの歴史も理解する必要があるため難読書に分類されるかもしれません。

本記事では、この難解なピーター・ドラッカーの「マネジメント」からマーケティング部分に焦点を当てて、できる限り分かりやすく噛み砕いて解説していきます。

企業の目的は顧客を創造することである

本著では「企業の目的は顧客を創造することである」とされています。

企業の目的の定義は一つしかない。
それは、顧客を創造することである。

市場を作るのは神や自然ではなく企業であり、欲求があるところに満足を届ける手段を提供すると説明されているのです。ただし、欲求は潜在的なこともあるため、有効需要に変えられて初めて市場が成り立ちます。

※有効需要~現実に存在する財に対する需要のこと

また「企業とは何かを決めるのは顧客である」とも説明されています。
その理由は、顧客が商品・サービスを購入するかしないかの意志決定権を持っているからです。

つまり、顧客が商品・サービスを購入しなければ、企業は成り立たなくなるということです。

順番に並べて整理してみましょう。

1. 顧客が求めてるものがある(潜在的な欲求を抱えている)
2. 顧客の欲求があるところに満足を届ける必要がある
3. 顧客の欲求を満たす商品・サービスを作る必要がある
4. 提供した商品が有効需要に変えられることで市場が成り立つ
5. この流れで顧客を創造することが企業の目的である

欲求があるだけでは市場は成り立ちません。欲求を満たす商品・サービスが作り出されて市場を作ることで、初めて顧客が生まれます。
この「顧客を創造すること」こそ、企業の唯一の目的だと説いています。

そして、企業が顧客を創造するための2つの基本的な機能を「マーケティング」と「イノベーション」として、重要な役割に位置づけているのです。

マーケター診断(リード獲得用)

マーケティングとは何か?

ドラッカーはマーケティングを、企業の第一の機能としています。
著書内では、マーケティングを定義する上でのきっかけとして消費者運動について言及しており「消費者運動が企業に要求していることがマーケティング」だとしました。

本著で説明されている「マーケティング」を大まかに解説すると、以下のような流れによって定義づけられています。

・多くの企業では正しくマーケティングが行われていない
・消費者運動が企業に要求していることがマーケティングである
・多くの企業で行われているマーケティングは「販売の遂行」でしかない
・販売とマーケティングは真逆であり、補い合う部分さえない

※「販売」は元の英文では「Salling」という単語が使われ、日本語訳では「セールス」とされることもあります

ドラッカーが主張する「マーケティングとは?」を理解するために重要となるのは「販売(セリング)とマーケティングは真逆のものである」ということです。

両者の違いを明確に説明するのは難しく、現実の企業の職務範囲も重なる部分は多いはずです。ですが、ドラッカーは「両者は真逆で補い合う部分さえない」と言い切っています。その意味について説明していきます。

販売とマーケティングの違いを理解する

ドラッカーは「販売とマーケティングは違うもの、まったくの真逆である」と強く主張しています。

以前までのマーケティングは「販売に関する職務を遂行すること」を意味するに過ぎず、それでは「まだ販売」でしかないと言うのです。

ドラッカーはマーケティングと販売の違いを理解するために、以下のような違いを説明しています。

マーケティングと販売の違い
真のマーケティング

真のマーケティングが顧客からスタートするものであるのに対し、販売は企業が作ったものを売ることをただ実行しているだけなのです。これは、現代のマーケティング用語で言うところの「プロダクトアウト/マーケットイン」にも通ずるかもしれません。

・プロダクトアウト
顧客のニーズよりも企業側の理論を重視すること。作り手がいいと思うものや作ったものを売る考え方。

・マーケットイン
顧客ニーズを優先し、顧客視点で商品の企画・開発を行い提供していくこと。顧客が望むものを作る考え方。

実務上では販売とマーケティングが混合されることは多いですが、ドラッカーの定義では「販売とマーケティングはまったく別のもの」とされており、役割や目的がまったく異なると考えられています。

マーケターの日々の業務が「ただ企業が作ったものを販売しているだけ」になっていないか、見直す必要があるということです。

マーケティングの理想は販売を不要とすることである

ドラッカーは販売とマーケティングが違うことに加えて「販売とマーケティングは補い合う部分さえない」「マーケティングの理想は販売を不要とすること」とまで主張しています。

マーケティングの目指すべきところは「顧客を理解し、製品とサービスを合わせ、自ずから売れる状態にすること」だとしているのです。

ただし、これはあくまで理想とも説明しており「もちろん何らかの販売は必要」との補足も加えています。

日本の大手コンビニチェーンで例えてみましょう。

コンビニチェーンは既に国内でも成長市場で、今でこそ「誰もが知っている」「そこで何が買えるか」を認知しています。ですが、コンビニ事業も立ち上げ時から普及までには、以下のようなプロセスが存在したはずです。

▼大手コンビニチェーンの過去の取り組み
・コンビニがどのような商品を提供しているかを消費者に知ってもらう
・社名(またはサービス名)を認知してもらいコンビニ店舗を出店している企業だと認知してもらう
・実際に自社サービスを利用してもらい「便利だ」と思ってまた来てもらう
・店舗内に置く商品を他者から入荷する

この場合ですと「自社の名前を知ってもらい、どのようなサービスを提供しているのか?」を知ってもらうための取り組みはマーケティングだと言えるかもしれませんが、実際に売っている商品は「他社の商品の販売の代理(セリング)」だと言えます。

ですが、コンビニチェーン店舗が拡大するに連れて「コンビニは便利だ」「コンビニに行けば生活に必要なものが24時間いつでも手に入る」と多くの国民が認識することで「自ずから売れる状態=理想のマーケティング」に近づいていきました。

今では、他社の商品から自社開発商品へ入れ替えて販路拡大や他社への営業を行うことなく自社製品(例:自社ブランドの食品など)が売れる状態にまで至っています。

消費者目線からすれば「大手コンビニチェーンは販売を行っている会社」に見えるかもしれませんが、企業目線で見ると主要な役割は「マーケティング」になるのです。

大事なことは、いかに自社から販売(セリング)を減らしてマーケティングに変えていくか、ということです。

イノベーションとは、新しい満足度を生み出すこと

イノベーションは現代では「革新」と訳されることが多く、意味合いとしては「新しい何かが生まれて社会が変わっていくこと(例:iPhoneなど)」をイメージされるかもしれません。

しかし、ドラッカーはイノベーションを企業の第二の機能として「新しい満足度を生み出すこと」と定義しています。

イノベーションの結果もたらされるものは、よりよい製品、より多くの便利さ、より大きな欲求の満足です。「より良い物を提供し、企業がより良くなっていく」と経済・社会的意義が強調されています。

イノベーションとは、人的資源や物的資源に対し、より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすことなのです。

また、イノベーションは発明や技術に関するコンセプトではなく、経済に関わることだとも説いています。職務範囲としては、企業のあらゆる部門、職能、活動に及び、一つの職能とみなすことはできないとされています。

著書内では、以下の例が「既存の製品の新しい用途を見つけること=イノベーション」として紹介されています。

イヌイットに対して凍結防止のためとして冷蔵庫を売ることは、新しい工程の開発や新しい製品の発明に劣らないイノベーションである。
(中略)
技術的には既存の製品があるだけである。
だが、経済的には、イノベーションが行われている。

この例では、既製品である冷蔵庫をイヌイット(カナダ北部などの氷雪地帯に住む民族)に売ることが「経済的なイノベーション」として紹介されています。
つまり、何か新しいプロダクトを生み出したり技術開発したりすることだけでなく、市場を広げたり、新しい顧客を見つけることもイノベーションに含まれるのです。

著書内の「イノベーションの目標」では、以下の4種類にイノベーションが分類されています。

①製品とサービスにおけるイノベーション
②市場におけるイノベーション
③消費者の行動や価値観におけるイノベーション
④製品を市場へ持っていくまでのイノベーション

とくに②〜④は実際のマーケティングにおいても、市場シェアの調査から消費者行動の分析、製品の販路開拓や集客チャネルの拡充などの実務が含まれることとなるため、ドラッカーの定義でのイノベーションであると考えられます。

マーケターの日々の仕事はイノベーションでもあり、企業、そして社会により大きな富をもたらすために行われるのです。

「顧客は誰か?」を問うための企業と事業の定義

ここまでの解説で何度も「顧客の創造」と強調してきましたが「そもそも、顧客とは誰なのか?」という問いに答えを出す必要があります。

これにはドラッカーも「やさしい問いではない」「答えのわかりきった問いでない」と、難しい問いであることを強調しています。

企業の目的は顧客を創造することと紹介しましたが、個々の企業の目的や使命を定義する時にも「出発点は一つしかない、顧客である」と説かれています。そして、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するべきか決まってくるのです。

もし、この問いに企業が答えられないのであれば「我々の事業は何か」が明確でない証拠です。この問いには、企業を外部すなわち「顧客と市場の観点」から見て、初めて答えることができるとされています。

ここで重要なのは「企業と顧客の関係は相互に左右するもの」ということです。

企業の在り方を決めるために顧客は必要ですが、顧客が定まらない以上は企業の目的が不明瞭なまま進むざるを得ないということになります。

ですので「いつ問うべきか?」ということも重要になってきます。

ほとんどの企業は苦境に陥った時しか問いを行いません。そして、その問いは事態を好転させることがあるため重要なものだと認識されやすくなります。

ですが、ドラッカーは「成功した時こそ事業が何かを問うべきだ」と主張しています。それには、成功した際には成功要因が明白であると錯覚し、都合の良い現実や新しい問題を作り出すからです。

他にも「我々の事業は何になるか」「我々の事業は何であるべきか」「我々の事業のうち何を捨てるか」も問う必要があり、顧客を通じて事業の在り方を何度も問い直すことが大事だと説いています。

「顧客は誰か?我々の事業は何か?」を問うにあたっての流れを、今一度まとめてみましょう。

1. 事業は何かを問うためには顧客を起点にする必要がある
2. そのため、まずは顧客が誰か問う必要がある
3. ただし、顧客が定まらないうちは事業が何かも定まらないうちに進むざるをえない
4. そのため「いつ問うか?」も重要である

このように「顧客理解」は答えを出すことが非常に難しい一方で、多くのマーケターが興味関心の高いものでもあるはずです。それは、顧客を理解することが事業の在り方をも決めると感覚的に理解しているからかもしれません。

「顧客と企業の関係は相互に左右し、お互いの在り方を何度も定義し直すもの」と覚えておきましょう。

ピクルスのリアルな事例を紹介

ドラッカーの「真のマーケティング」と「イノベーション」に該当する事例として、ピクルスが提供しているSNSキャンペーン支援ツール「キャンつく」をご紹介します。

SNSで「フォローしてくださった方、何名様に◯◯をプレゼント」といったキャンペーンを行う際、従来は当選した人への連絡などの抽選作業を手動で行っており、大変な工数がかかっていました。
ピクルスでは多くの企業様のキャンペーン支援を行う中で、「この大変な作業を効率化できるサービスが必要なのではないか」という気づきに至ります。
そうして開発されたのが、キャンペーン作業の大半を自動化し、簡単に行えるキャンつくです。

これはドラッカーの唱える真のマーケティング、「顧客目線で何を売りたいか?」「顧客が必要として満足しているもの」に該当します。
実際、キャンつくはリリース以降多くの企業様にご利用いただき、現在では支援実績3000件を超えています。

リリース当初はキャンペーンツールというもの自体が他に存在しませんでしたが、現在では「キャンペーンをやるならツール利用が当たり前」というほど定着しました。
顧客に新しい満足を生み出した「イノベーション」と言えるでしょう。

ピクルスではまた新たなイノベーションを起こそうとしています。診断コンテンツ作成ツール、「ヨミトル」です。
こちらは2022年にリリースされた新サービスで、マーケティングに使えるハイクオリティな診断コンテンツを、自社で簡単に作れるツールとなっています。

診断と言うとエンタメコンテンツのイメージが強いかもしれませんが、実はマーケティングに使えます。
診断がマーケティングに提供できる価値。それは、先ほどお伝えした「顧客理解」です。

診断はユーザーが設問に答えることで、それに応じた結果を表示するもの。
ユーザーの回答からその人の傾向や抱えている課題を掘り下げ、理解を深めることができます。

わかりやすい例として、ピクルスで制作した「マーケティング課題診断」が挙げられます。

マーケティング課題診断
この診断では、回答に応じて下記のような項目ごとのマーケティング課題を分析。

マーケティング課題診断
たとえば商談前にこういった診断をお客様にやっていただければ、お客様がビジネスにおいて抱える課題を事前に把握できます。
把握した情報に基づいて最適化した提案を行うことで、成約率がアップ。
また、データを蓄積すれば顧客課題を反映した新商品・サービスの開発にも役立ちます。

ドラッカー流マーケティングの本質である「顧客理解」「顧客創造」を、診断マーケティングによって実現し、新しい満足度を生み出していく。
そんな想いを胸に、日々「ヨミトル」のマーケティングに励んでいます。

診断コンテンツによる顧客理解、顧客獲得について詳しくは、下記の記事をご覧ください。

まとめ:「顧客/企業とは何か?」という問いがマーケティングの役割を確固たるものしていく

以上、名著「マネジメント」より、マーケティングに関する記述を抜粋して解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

今回、マネジメントより抜粋したマーケティングに関する項目を、今一度整理しておきます。

1.企業の目的は顧客を創造すること
2.顧客の創造のためにはマーケティングとイノベーションが重要
3.顧客を創造するためには顧客を理解する必要がある
4.顧客を理解していくにあたって企業の在り方も見つめ直す必要がある

今回は紹介しておりませんが、上記のような「顧客とは誰か?我々の企業は何か?」が明確になればなるほど、経営・マーケティング上の目標も明確になっていくとされています。

ですので、本著を読み解くことで「企業とは何か?マーケティングとは何か?顧客とは誰か?」といった問いに対する知見が深まり、より精度の高い意思決定ができるようになっていくことでしょう。

最後に、本著を読む際の注意点もご紹介しておきます。

①1974年の著書でなおかつ欧米の著書なので、現代日本では当てはめにくい理論もある
②著者のピーター・ドラッカーが経済学者であるため、現実を無視した理想論に寄っている部分もある
③企業・社会全体での話が多いのでマーケターの権限のみではどうしようもできない点も多い

まず、本著が発行されたのが1974年であるため、時代背景が合わない点には注意です。本著内で提唱されたことが、時代を追って、様々なフレームワークやマーケティング用語に発展していったため、古典を読むぐらいの認識でいた方がいいでしょう。

マーケティング実務に関して言えば「販売をなくし自ずから売れる状態にする」は、近づくことはできても達成することは現実的には難しい点には注意です。同著内でも「企業が存在するのは成長する経済のみ」と「理想状態に達したマーケティング」自体が否定されています。そのためにイノベーションも必要という構図になっています。

また、書籍全体が経営目線での話になるため、マーケティング知識のために読むだけには余分な情報が多い点にも注意です。もし読むのであれば、マネジメントを意識する必要が出てきたり、経営面での意思決定に関わる機会が増えた時期で問題ないでしょう。

今日、マーケティングやイノベーションとされているものと、ドラッカーが提唱した概念が異なるためややこしいですが、一貫して著者が主張しているのは「顧客を創造するための企業、そのためのマーケティングとイノベーション」だということです。

マーケターとしての自分自身、あるいは自身の企業をより確固たるものにしていくために、ドラッカーが提唱した「マーケティング」についてご理解いただけたのであれば、幸いです。

「イノベーション」というテーマについては、下記の記事も参考になるのでご参照ください。

マーケター診断(リード獲得用)

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想定される活用シーン

マーケティング全般

ライター:新田 拓也

デジタルマーケティングコンサルタント

来歴:小売販売→SEO集客/WEB解析→DX/デジタルマーケティングコンサルティング ※記事内容は株式会社ピクルスによる校正・編集が行われており、著者の見解と異なることがあります。 著者情報およびマーケティング見解については https://takuya-nitta.com/ をご覧ください。

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