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ブログ「明日のマーケティングは、今日の発見から。」

ナッジ理論とは?マーケティングへの活用方法7選をご紹介|基本解説編

ナッジ理論とは?マーケティングへの活用方法7選をご紹介|基本解説編

「行動経済学は、マーケティングの別称である。」こう発言したのは、マーケティングの大家、フィリップ・コトラー氏です。生命保険会社のテレビCMにも登場し認知度が向上している行動経済学ですが、マーケティングとは密接な関係にあります。

行動経済学の知見を活用して、顧客を「望ましい行動・選択」へ導こうとするのが、ナッジ理論です。

本記事では、基本解説編として、ナッジ理論とは何か、そして7つの活用方法についてご説明いたします。

ナッジ理論とは

ナッジ(nudge)には、「ひじで軽く小突くように、自発的に望ましい行動を促す」という意味があります。ナッジ理論の専門書には、キリンやゾウの親子のイラストが描かれていることがよくあります。

そのイラストでは親が子供に鼻先をあててやさしく行き先を誘導しています。この仕草こそがナッジ理論の本質を表しています。

ナッジ

ナッジ理論とは、「相手に強制することなく、自分自身で判断して望ましい選択をするための手助けをするための方法論」のことです。

ナッジ理論は、ノーベル賞を受賞した行動経済学の権威、リチャード・セイラー教授が提唱した概念です。比較的新しい考えですが、すでに幅広い分野に活用されています。

スーパーのレジに並ぶ際に、床に足型マークが書かれていることがありますが、これもナッジ理論を活かしたものです。足型マークによって、自然と整然としたレジ待ちの列ができるように仕組んでいるのです。

ナッジ理論を活かしたもの

前提となる行動経済学の考え

ナッジ理論は行動経済学から来ている考え方なので、前提知識として確認しておきましょう。

まず経済学と行動経済学の違いからご紹介します。

経済学は、人は合理的な選択をして常に自分の利益を最大化するための選択をするという考えに基づいています。

合理的な選択とは、モノ・サービスを購入するときに、その人が認める価値と支払うべき対価を照らし合わせ、いくつかの選択肢から一番良いものを選ぶということです。

ところが、現実ではそのような合理的選択をいつも行なっているわけではありません。

本記事をお読みの皆さまも「衝動買い」などのご経験があるのではないでしょうか。限られた情報量と時間の中で、直感的に選択をしているケースが多いのです。

そこで登場するのが行動経済学です。

行動経済学では、経済学では説明がつかない非合理的な選択を心理学の要素を加えて解明を試みます。そして、行動経済学によって見つけだされた非合理的な意思決定を合理的なものへと導こうとするのがナッジ理論なのです。

ナッジ理論の活用方法7選

ナッジ理論を活用した主な活用方法として、以下の7つが挙げられます。

・デフォルト
・仕掛け
・フレーミング効果
・同調効果
・インセンティブ
・ラベリング効果
・アンカリング効果

この言葉だけ見ても何のことか分からない、という方がほとんどかと思いますが、それぞれ解説していきますのでご安心ください。

デフォルト

一番よく活用されているのがデフォルトです。

デフォルトは、IT関係でもよく使われますので、馴染みのある方もいるかもしれません。
これは、初期値として選択されている状態にしておくという意味です。

例えば、オンラインショッピングで商品を購入した際、決済ページの下のところに「当ショップからのおトク情報のメールを受け取りますか?」という質問で「はい」のボックスにすでにチェックが入っているのを見たことがある人は多いと思います。

「はい」か「いいえ」のどちらかを選ぶという手間をはじめから省略してあげているのです。あらかじめ選んでほしい方をチェックをしておくだけで、同意される確率が格段に上がります。

選択してもらいたい方をデフォルトにする一方で、自由な選択の妨げになるようなことはしてはいけません。メールを受け取りたくないという人はチェックを外せばよいだけで、あとになっても簡単な手続きで受け取り拒否できるようにしておくことがナッジのルールです。

デフォルトは、顧客の良い選択をするためのお手伝いですので、積極的に活用してみましょう。

仕掛け

仕掛けとは、ついついやってしまいたくなるようなひと工夫を加えることです。

男子トイレの便器に描かれたハエの絵はその一例です。ハエの絵に狙いを定めることでトイレをきれいに使ってもらうことを狙っています。

また、チラシスタンドの上に鏡を設置することで、鏡がない時と比較して、チラシを手に取った枚数が2.5倍に増えたという報告があります。

LPを制作する際に思わずボタンをクリックしたくなるようなひと工夫を入れるのもいいかもしれません。

フレーミング効果

同じ内容でも伝え方や表現方法が違うと印象が大きく異なることをフレーミング効果と言います。

有名なフレーズで、コップに「半分しか水が入っていない」と「半分も水が入っている」というのがあります。後者の方がよりポジティブな印象を与えています。

栄養ドリンクの製品情報に「◯◯◯、1000mg配合!」と表記されているのと「◯◯◯、1g配合!」では、言っていることは同じことですが、前者の方がたくさん入って効き目が良さそうに感じます。

ピザのデリバリーチェーンの「2枚目無料!」というチラシもフレーミング効果を狙ったものです。「ピザ半額!」よりも無料というフレーズのインパクトが大きいからです。

誇大表現にならないよう注意は必要ですが、マーケティングのメッセージを考える上で非常に役立ちますので、ぜひトライしてみてください。

同調効果

ラーメン屋さんが2軒あって、一方はお客さんがほとんどいなくて、もう片方には行列ができていたとします。情報がなくても、行列のある方に並んででも入りたくなる人は多いです。これが同調効果です。人は自分の意見や行動が周りと同じだと安心します。

水着メーカーがまだ肌寒い春先に「今年はこの色が流行します!」と、新作発表するのも同調効果を狙ってのものです。実際には、流行は着る人が作るものですから春先にメーカーが発表するのは予測にすぎません。でも、「流行に後れたくない」という思いがはたらき、メーカーの勧める色の水着を選ぶ人が多くなります。

その一方で、「他人と被りたくない」という人もいます。「他人とは違うものが欲しい」という心理的な動きのことをスノッブ効果といいます。

同調効果とスノッブ効果は、真逆のようにみえますが、実は他人のことを意識しているという点では同じです。このようなニーズに対しては、「限定品」といった希少性を打ち出すと効果的です。

インセンティブ

インセンティブは、顧客が受け取る報酬のことです。

金銭的な報酬も含みますが、それ以外もあります。環境に配慮したものを選ぶことで得られる道徳的な報酬もそのひとつです。

同じ報酬を受けとれる場合でも、あとで受け取る報酬よりも、先に渡された方が失う痛みを強く感じます。

無条件で100万円もらえる場合とじゃんけんで勝てば200万円、負けると0円の場合のどちらを選ぶかと聞くと、多くの人が無条件の100万円を選びます。

これは、100万円を無条件でもらえると思った瞬間から100万円を失いたくないと思う気持ちが発生するからと言われています。

買い物の際に付与される期間限定ポイントは、金額に換算するとそれほど大きくないにもかかわらず、使わないともったいないという意識が働き、リピート購入へとつながりやすくなります。

インセンティブには、抜け道を見つけられるという注意点があります。植民地時代のインドの例で「コブラ効果」と言われています。コブラを捕まえた人に懸賞金を出すようにすると、懸賞金目当てでコブラを育てる人が出てきてコブラが増えてしまったそうです。

インセンティブを提供する側と受け取る側の双方の利点を深く理解した上で設計しましょう。

ラベリング

イクメン、山ガール、カープ女子、おひとりさま、女子会などなど。これらはラベリング効果の一例です。ラベリングとは、先にこちらから決めつけてしまうことで、その人に望ましい行動を取ってもらうように仕向けることを言います。

例えば、「イクメン」は育児に積極的に参加する父親のことです。少子化対策として男性の子育て参加を促すために浸透が図られました。その効果として、育児休業取得率が向上し「イクメン」が社会的にも受け入れられるようになりました。

トイレで「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」という貼り紙を見たことがある人も多いと思いますが、これもラベリング効果を期待したものです。行動は強制していなくても「あなたは、〜ですね」と言われると、心理的には反する行動を取りづらくなります。

ラベリングは、相手を「決めつける」という点で、ナッジの中では強制力が強めで取り扱いには注意が必要と言われています。たとえば、血液型の性格診断もラベリング効果と言われていますが、A型の人が神経質と言われても、神経質でないと思っているA型の人からは反感を持たれかねません。

実際に決めつけられた相手の立場に立った場合を想定した上で、活用するようにしましょう。

アンカリング効果

アンカリングのアンカーとは、船の錨のことをいいます。船が錨を下ろしたかのように人の心に深く印象を残すことをアンカリング効果と言います。

アンカリング効果は価格設定でよく用いられています。テレビショッピングなどで、「通常価格1万円のところ、今回は特別価格5,000円にさせていただきます!」とか、「さらに、もう1つお付けします!」というように、お得感が増していくように商品紹介をしているのをご記憶の人も多いのではないでしょうか?

これは、1万円という価格が印象に残ることによって、後に提示された価格に対するお得感が増すことを期待しています。

ただし、安易に定価と特価を表示することで割安感を出そうとすることには注意が必要です。セール価格を安く見せるために意図的に実態とかけ離れた高価格を通常価格として表示することは法的にも禁止されています。実情に沿って適切に実施する必要があります。

アンカリング効果の応用例として、自社のラインナップの中にハイスペックの超高価品を加えることで標準グレード品をよりリーズナブルに見せるという手段も有効でしょう。

ナッジ理論を活用する際の注意点

ナッジ理論の主な活用方法としてデフォルト、仕掛け、フレーミング効果、同調効果、インセンティブ、ラベリング効果、アンカリング効果をご紹介しました。

注意点として、ナッジ理論は、「顧客を操っている」という批判があることに触れておきます。特に、日本人はナッジへの抵抗感が強いとの報告もあります。

だからこそ忘れないで欲しいことは、ナッジはあくまで「顧客が良い方向に向いてもらうための手助け」でなくてはならないのです。

自社の利益を優先した考えだけでナッジを活用しようとすると、うまくいかないだけでなく、批判を受けることになりかねません。

自社の商品・サービスを選んでくれることが顧客の最良の選択であるという自信を持ってナッジの活用を検討してみてください。

まとめ

今回は、基本編としてナッジ理論の主な手法をご紹介しました。

この中で自社のマーケティングに取り入れてみようというアイデアが浮かんできた方はぜひ実践してみてください。

これまでご紹介したようにナッジは少しのアイデアがきっかけとなることが多く、また、大きな投資を必要としない点も利点であると言われています。

次のマーケティング活用編の記事では、実際の検討・評価のフレームワークと活用事例をご紹介いたします。